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喜劇は何処にでもある

悲劇もまた然り


それは目に見えない所にあるのかもしれないし
目にしているのに気付かぬこともあるだろう。


「……ジュノー…」

ぼんやりと昨日の新聞に目を通していて、何やらごちゃごちゃした写真と『ジュノー』という町名に目を引かれた。

たしか“あいつ”の出身だったな。

「…何か面白い記事でもあったか」

まるでセンサーでもついているかのように、一瞬頭に思い描いた騎士が実際に目の前に現れた。

「…ジュノーにあると噂された“旧・生体研究所”らしき施設を発見、検挙。」

それだけ言って誌面を相手に押し付ける。
見ていて気分のいい記事ではなかった、そんなものを朝刊にいれるなと思う。

「薬物、拘束、解剖…はぁ~イカれてるな。」

まるで他人事のように。
写真に映っている男に気付かなかったわけではあるまい。
長年その研究所に閉じ込められたままで、先日救出されたという被害者。

印刷のせいもあるだろうが、どこか雰囲気がこの騎士に似ていることに。

ジュノーにいた頃、定期的に「何処かの研究所」に採血されていたとこの男はいう。
それがこの施設だというならば、一歩間違えばこの写真に写っていた彼は自身だったかもしれないというのに。
もしくは隣の写真にある黒い肉塊や死体や骨だったかもしれない。

それに、この写真の男と無関係ではないかもしれない…

「お前と、一緒に暮らして、狩りして、闘って、飯食って、話して…」

新聞はテーブルに放られ、後ろから手が伸びてきて首を絞めるように抱きしめられる。

「そんだけが俺の全てだ。外のどこかの出来事なんざどーでもいい」
「…この引きこもりが」

皮肉を言うと、笑う気配があって後から耳に強く歯が立てられた。

怯えたようにカメラを見つめて写真に写ったように思っていた男の瞳が、今度はこちらを恨めしげに睨んでいるように見えた。



悪いな、俺もあんたのことはどうでもいい。


写真に向かって呟き、抱きしめてくる相手に身を任せてため息をついた。
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