*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
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「ちょっとこっちきて」
日が沈んだ頃、ルナティスが前触れもなくヒショウにそう呼びかけ、外へ連れ出す。
数分歩いて辿りついたのは、簡素な屋敷の脇。
外壁に松明が点々と括り付けられている通りだった。
「何だ、こんな所で」
「見て欲しいのがあるんだ」
そう言ってルナティスが袖の中に隠し持っていた物を掲げる。
マナが知り合いのダンサーから貰ったと言って先刻見せびらかしていた装飾刀だった。
刃の研がれていない刀身はシンプルだが柄には過剰な装飾と絹布があしらわれている。
マナが一目で気に入ったというだけあって近くで見ても見事なものだった。
「………、嫌な気分になったら言ってくれよ。」
ヒショウには全く意味の掴めないようなことを言いながら、ルナティスは刀を掲げる
松明の炎と月明かりが映し出す世界。
刀と彼の横顔が揺らめく。
針金を通したように延びる背筋、刀の刃先で反対の手の平から二の腕迄をゆっくりとなぞり
そして目の前に水平に走らせ、刀を手首と指で回転させながら背を回り、いつの間にか反対の手に収まる。
足を開き、まるでそこにいない敵を切り裂き、威嚇するようにルナティスは刀を振るい、寸分の狂いもないリズムでステップを踏み虚空を睨みつける。
徐々にリズムは速まり、高鳴り、腕、腰、足、刀。全てが煽情的に舞う。
まるで戦場の炎のように激しく舞い、狂乱の音楽が聞こえるようだった。
だがそうかと思えばリズムは治まり水面さえざわめかせないような緩やかで無音のステップと刀の機械的な動き。
舞神の様に凜とした表情が神秘的で、髪や睫毛微かな唇の動き、なにもかもに魅入られる。
リズムが2度、いや3度だったかもしれないが、変調したころに静かに夜を燃やすような舞いはひそかに静まっていった。
それは紛れも無く、見事な舞神のものだった。
「……どう?」
どうと聞かれても
「……凄いな、何とも言えず…綺麗だった。どこでそんな…」
「あそこで」
ルナティスが言葉を濁し、苦笑いする。
それだけで分かってしまった。
そしてヒショウは素直に絶賛してしまったことを後悔した。
「いろいろあって、仕込まれたんだけど、いつも体調不良だったから完全じゃなかったんだよね。…必死、ではあったけど。」
「………。」
「だから万全の状態でのは、ヒショウが初めてだな。…うん、嫌じゃなかったら見て貰いたかったから。」
そう言う笑顔に陰はないのに、悲観的になるのはルナティスに悪いかもしれない。
だがならずにはいられなかった。
閉じ込められ踏みにじられていた、それだけではない。
彼が言葉を濁す場所で純粋に舞いを習ったとは思えない。
傷付いた身体で、見世物にされながら舞う少年の姿が目に浮かぶ。
「……皆の前では見せないのか?」
気の利いた慰めや労りなど思いつかなかった。
「ヒショウに、1番に見て欲しかったから。皆には…今度の宴会でやるかな?自分がこうゆうのやってた、って、この宝刀見るまで忘れてたし。」
「……きっと、皆驚く。」
「だったらいいな。」
余りにも自然に笑うルナティス。
彼は…心から笑っていないのかもしれない。
でも
「今が幸せだから、昔の嫌な思い出だって今に活かせるさ。」
その言葉は事実だろう。
その幸せの片鱗になれるなら。
喜んで自分を彼に捧げよう。
彼の苦痛も受け入れよう。
「……。」
ヒショウは冷静な思考と緩やかな動きで目の前のルナティスを引き寄せ、腕の中に抱きしめた。
彼は突然の事で目を丸くしたが、単純に嬉しいと思ったから何もしなかった。
「…………聞いて、いいか。」
「………。」
肩に顔を埋めた彼から「何を?」とまで聞かれずとも分かった。
話すことは苦ではなかった。
それでまたヒショウがルナティスに引け目を感じるのが目に見えてしまい、迷う。
だが、ただ受け入れ慰めてくれてはいてもヒショウから話に突っ込んでくるのは初めてのこと。
彼なりにいろいろ考え、ルナティスの苦痛の記憶と正面から向き合い歩み寄ろうとした結果だろうと、補足がなくてもわかる。
「…あの部屋から時々、連れ出された。僕を心底気に入った人がいて、特別に。派手な服着せられて。」
「…何処へ連れていかれた。」
「…サロン。身なりのいい人達沢山がいて、奴隷を連れてくる人もいた。」
「…そこで何を。」
ルナティスが、ヒショウの背中に手を回して抱き返す。
彼はまるで催眠術に誘導されるようにポツリポツリと話す。
「さっきの踊りを。」
それにヒショウはまた質問を返して話を引き出していく。
「それだけか。」
そしてルナティスはおとなしく答える。
「………――――。」
それは、壮絶な悪夢。
ヒショウはそれに耐え切れなかった。
日が沈んだ頃、ルナティスが前触れもなくヒショウにそう呼びかけ、外へ連れ出す。
数分歩いて辿りついたのは、簡素な屋敷の脇。
外壁に松明が点々と括り付けられている通りだった。
「何だ、こんな所で」
「見て欲しいのがあるんだ」
そう言ってルナティスが袖の中に隠し持っていた物を掲げる。
マナが知り合いのダンサーから貰ったと言って先刻見せびらかしていた装飾刀だった。
刃の研がれていない刀身はシンプルだが柄には過剰な装飾と絹布があしらわれている。
マナが一目で気に入ったというだけあって近くで見ても見事なものだった。
「………、嫌な気分になったら言ってくれよ。」
ヒショウには全く意味の掴めないようなことを言いながら、ルナティスは刀を掲げる
松明の炎と月明かりが映し出す世界。
刀と彼の横顔が揺らめく。
針金を通したように延びる背筋、刀の刃先で反対の手の平から二の腕迄をゆっくりとなぞり
そして目の前に水平に走らせ、刀を手首と指で回転させながら背を回り、いつの間にか反対の手に収まる。
足を開き、まるでそこにいない敵を切り裂き、威嚇するようにルナティスは刀を振るい、寸分の狂いもないリズムでステップを踏み虚空を睨みつける。
徐々にリズムは速まり、高鳴り、腕、腰、足、刀。全てが煽情的に舞う。
まるで戦場の炎のように激しく舞い、狂乱の音楽が聞こえるようだった。
だがそうかと思えばリズムは治まり水面さえざわめかせないような緩やかで無音のステップと刀の機械的な動き。
舞神の様に凜とした表情が神秘的で、髪や睫毛微かな唇の動き、なにもかもに魅入られる。
リズムが2度、いや3度だったかもしれないが、変調したころに静かに夜を燃やすような舞いはひそかに静まっていった。
それは紛れも無く、見事な舞神のものだった。
「……どう?」
どうと聞かれても
「……凄いな、何とも言えず…綺麗だった。どこでそんな…」
「あそこで」
ルナティスが言葉を濁し、苦笑いする。
それだけで分かってしまった。
そしてヒショウは素直に絶賛してしまったことを後悔した。
「いろいろあって、仕込まれたんだけど、いつも体調不良だったから完全じゃなかったんだよね。…必死、ではあったけど。」
「………。」
「だから万全の状態でのは、ヒショウが初めてだな。…うん、嫌じゃなかったら見て貰いたかったから。」
そう言う笑顔に陰はないのに、悲観的になるのはルナティスに悪いかもしれない。
だがならずにはいられなかった。
閉じ込められ踏みにじられていた、それだけではない。
彼が言葉を濁す場所で純粋に舞いを習ったとは思えない。
傷付いた身体で、見世物にされながら舞う少年の姿が目に浮かぶ。
「……皆の前では見せないのか?」
気の利いた慰めや労りなど思いつかなかった。
「ヒショウに、1番に見て欲しかったから。皆には…今度の宴会でやるかな?自分がこうゆうのやってた、って、この宝刀見るまで忘れてたし。」
「……きっと、皆驚く。」
「だったらいいな。」
余りにも自然に笑うルナティス。
彼は…心から笑っていないのかもしれない。
でも
「今が幸せだから、昔の嫌な思い出だって今に活かせるさ。」
その言葉は事実だろう。
その幸せの片鱗になれるなら。
喜んで自分を彼に捧げよう。
彼の苦痛も受け入れよう。
「……。」
ヒショウは冷静な思考と緩やかな動きで目の前のルナティスを引き寄せ、腕の中に抱きしめた。
彼は突然の事で目を丸くしたが、単純に嬉しいと思ったから何もしなかった。
「…………聞いて、いいか。」
「………。」
肩に顔を埋めた彼から「何を?」とまで聞かれずとも分かった。
話すことは苦ではなかった。
それでまたヒショウがルナティスに引け目を感じるのが目に見えてしまい、迷う。
だが、ただ受け入れ慰めてくれてはいてもヒショウから話に突っ込んでくるのは初めてのこと。
彼なりにいろいろ考え、ルナティスの苦痛の記憶と正面から向き合い歩み寄ろうとした結果だろうと、補足がなくてもわかる。
「…あの部屋から時々、連れ出された。僕を心底気に入った人がいて、特別に。派手な服着せられて。」
「…何処へ連れていかれた。」
「…サロン。身なりのいい人達沢山がいて、奴隷を連れてくる人もいた。」
「…そこで何を。」
ルナティスが、ヒショウの背中に手を回して抱き返す。
彼はまるで催眠術に誘導されるようにポツリポツリと話す。
「さっきの踊りを。」
それにヒショウはまた質問を返して話を引き出していく。
「それだけか。」
そしてルナティスはおとなしく答える。
「………――――。」
それは、壮絶な悪夢。
ヒショウはそれに耐え切れなかった。
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