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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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泣きたくなるような虚しさと背徳感。
「…ごめん。」
まだ上がった息で呟き、茫然自失する。
見下ろした手には白い汚れ。
涙は出ないが、それを見る内に自分に腹が立ってくる。

かつては彼を汚したくないからと自分の身体を捧げたのに、彼を救い出した今は自分だけのものにした気になって…
けれど彼の心は自分の元にはない現実に、焦燥する。

渇く心は妄想でごまかすしかなかった。

「…最低」

自嘲して手ぬぐいに手を押し付ける。

「最低っていうのは多分相手の気持ちを考えない奴のことよ?」
「!!!??」

不意にすぐ隣から聞き慣れた声がして、心臓が跳ね上がった。
そして慌てて逃げるように下がってズボンを引き上げる。

「慌ててるとチャックに挟むわよ?」
「ちょっ、ヒショウいつからっ」「何だか最近とっても元気がないルナが気になって、待ち伏せてたの。」
「つまり、始めからいたのか」

反省の色無く、思い人の体は別人の意思に動かされて笑う。
さっきまで頭の中で散々に抱いた身体、でも中は頭の中で抱いていた人とは別人なのだ。
開き直っていつも通りでいることにした。

「セクハラです。覗きは犯罪です。」
「ごめんっ」
「…見なかった事にして。」

苦笑いしてそう頼むと、ヒショウは少し悲しそうな顔をする。

「ルナ…私ね、ヒショウ…いえ、アスカがやっぱり嫌いよ。」
「……。」
「ルナにあんなに大事にされているのに酷いわ。重いもの抱えて、私なんていう謎な因子までいて、大変なのは分かるけど…ルナを苦しめ過ぎよ、ルナの気持ちに気付いてもいいものでしょうに。」
「僕が勝手に気持ちを押し付けてるだけだ。気付かれてアスカに負担を増やすのも、困るな。」

だから、今のままでいい。
そう笑うルナティスにヒショウが抱き着く。
首に腕を回し、優しく抱きしめる。

「ん?」

ルナティスはわけも分からずその肩を労うように叩いて返す。
けれどそれへの反応は、それでは不満だとばかりに押し倒した。
そして彼のアコライトの法衣に手をかけてくる。

「ちょっ、ヒショウ、待った待ったっ!セクハラ反対っ!」
「本気よ」
性急な手つきを一旦止めて、半ば睨むようにルナティスを見下ろす。

「ルナ、私を抱いていいよ」
ヒショウが邪魔そうに髪をかき上げて、真っ直ぐルナティスを見つめる。
「…な、何言って…」
「私はアスカの心はあげられない、けど身体だけなら」

それは究極の誘惑だった。
当人ではないけれど、同じ身体を当人には知られずに手に入れられる。
きっとアスカに負担はあるだろうが、二人の関係は崩さずにいられる。
ルナティスが知らん顔をしていればその事実はしられない。
一度だけなら…


指を延ばし、白い喉に触れる。
自ら衿の合わせを開いている彼の手を掴み、引き寄せて身体の位置を入れ換える。
「…っ」
身体を重ねる。
顔を掌で包み込んで、唇を重ねる。
その直前で、ルナティスは動きを止めた。
ヒショウはただ優しげに微笑んでいる。

“彼女”は抱いて欲しいわけじゃない。
“アスカの身体”をルナティスに捧げてやりたいだけ。

結局はどこまでもルナティスの独りよがり。


「ルナ?」

涙が溢れた。
情けない。情けなくて、寂しい。ヒショウに触れていた指先から血の気が失せて熱は四散し、抱く気も失せる。
冷静になれば自分に再び嫌悪した。

「ごめん。」

アスカにも、彼女にも。
謝って、ベッドから離れる。

独りだ。
孤独で死んでしまいそう。
泣き崩れてしまいそう。
身体が、冷たい。
愛しい人ではない誰かの体温がほしかった。





「ぎゃああああああっ!!!!???」

そして隣の同居人のベッドに潜り込み、翌朝にはシェイディの悲鳴がして、彼に殴り起こされた。
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