*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
*小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。
*かなりぶつ切りです。
*携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)
*携帯にも対応しています。
*コメントでの感想なども歓迎です。
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まるでぬるま湯に浸かるような肌に心地良い陽気が差し込む。
こんな温かな空気に抱かれれば睡魔に誘われもするだろう。
犬や猫のような小動物が寝そべり静かにうたた寝するのが似合う午後、グローリィの膝にて眠るのはそれではなく若いアサシン、もちろんルァジノールだ。真っ白な髪に温かな光が射し眩しく輝く。
彼が人前でも警戒を解けるようになったのは珍しいことではない。グローリィを始め何名も名前をあげられる、敵ではないと知れば彼は容易に警戒を解けるようになった。
しかしこんな午後にうたた寝するのは珍しい。
春の陽気のせいだろうか、瞼を重そうにしていたジノに、ひざ枕を知らなかったらしい彼に、提案してあっさりと寝付かせたのは数分前のことだ。
「良い夢を見ていますか、ジノ」静かに問い掛けても返事はない、余程深く寝入っている様子。
寝所でさえ微かな物音に跳び起きていた彼が深い眠りを覚えたというのは良い傾向だと思う。
そっと柔らかな白髪を指先で撫でた。
膝を愛しい人に占拠され、眠りの空気が取り巻く中にいて眠くならないはずはない。
「私は…」
しかし
「そろそろ、後ろから刺さる殺気が悪夢になって出てきそう…かな…」
子供なら泣き出し、大人なら固まり、動物なら逃げ出しそうな殺気を放ち、後ろから首筋に刃を突き付けてくるアサシンがいる。
どうやらグローリィの代わりに仕事に出ているルナティスから伝言を預かってきたらしい。
暗殺者と冒険者という違いはあれど同じ「アサシン」という称号を持つ立場であるヒショウにとってルァジノールは後輩であり弟か息子のような感情さえも持つ。
そんな彼に危険が迫ればヒショウ身体を張る。つまり現在危険であると見なされたのはグローリィで、先刻からずっとこんな調子で刃物を突き付けてきている。
それなのに何か文句の一つでも言おうとすれば
「静かにしろ、ジノが起きる。」
この状況でつまり膝の上のルァジノールを起こすなと言う。
「鬼ですか貴方。」
かと言っても彼は良識ある人間だと理解している。
ヒショウがそっくなくあたれるのは彼の恋人たるルナティスか、グローリィくらいのものだ。
目の前で恋人掠奪宣言をしたことで目の敵にされたのがきっかけとはいえ、ヒショウが素で対応する数少ない人間の内の一人に入っているのだと思えば気分は悪くない。
「先日、ジュノスというリキュールが手に入ったのですが」
本当は、好きでもない実家の力で取り寄せさせた。
ジュノーの特産にしようと現地の若者が開発したらしいのだが、新しくてまだ流通に乗っていない上に作れる数に限りがある珍しい代物。
それをグローリィ自身はそんなに興味はなかったし詳しく知らないのだが、ヒショウが気にかけていたというのは知っている。
「よかったら飲みますか。」
「………。」
ここで飲むと言えば自然とカタールを下げなければならなくなる。
しかし冷静を装った目が揺らいで唇が何か言いたげに緩められているのが面白かった。
ヒショウにとってグローリィが素で向き合える人間なら、グローリィにとってヒショウは心から興味を持てる人間だった。からかい甲斐があるし彼の造形の整った顔は好きだ。
また、自分が絶対に落とせない人間だと知っているからこそ
「お代はキス一回で良いですよ」
ふざけて言い寄れるというものだ。
「俺の愛刀とのキスだったら喜んで」
「…貴方、本当に近頃ドSですね。」
苦笑いするグローリィに怒りを見せ付けるようにカタールの刃先で肌を撫でる。
「……。」
それは脅しというには優しいものだと思う。
剣先でありながら刃を立てず剣の腹で肌を押すように撫でるだけ。
皮も切れないような脅し。
思わず笑いそうになる。
「…この子とキス、一回ですよね」
そう言うとヒショウは心底怪訝な顔をした。この子、とは一体誰を指すのか。キスを、と示したのはヒショウが手にしているカタールしかない。
つまりはそういうことだった。少し身体をずらして、首を傾けて唇をカタールに寄せて見せた。
ぎょっとしたものの、咄嗟にカタールを引いてしまわなかったのは流石というべきか。
既にカタールの刃先はグローリィの口の中にあったのだから、引いていたら彼の舌や唇を傷つけてしまうところだ。
刃に沿って舌を滑らせ、逃がさないと刃の反対を指で押さえる。
刃で噛まれて鳴った僅かな唾なりがカタールの声にも思えた。
ヒショウはどうにも動かせなくなり、奇行にでているグローリィをせめて傷付けないようにカタールを固定する。
「……もういい。」
ニヤリと笑みながらヒショウを見上げる、まるで挑発されるようだったがそれでも動けない。
遂に彼は根を上げた。
「分かったから、やめろ。」
放されたカタールは尖端だけなぶられ唾液にうっすらと濡れていた。
ヒショウは潔癖だと彼の恋人が言っていた気がしたので開放ついでに法衣の袖で拭ってやる。
もう脅す気も失せたらしく、カタールは腰の鞘に収められてカチンと小さく鳴いた。
「……では、私はまだジノといたいので」
少し彼の眠りが浅くなってきているようだが、それを猫を寝かしつけるように撫でてやる。
「夜、ルナティスも帰ってくる頃にそちらにお邪魔しますよ。」
「……。」
「警戒しなくても良いですよ。ジノに嫌な思いさせたくないのは、誰よりも私なんですから。」
まだ少し不満を残しながらも彼は背を向けて渋々といった様子で部屋を後にする。
彼がいなくなって、やっとグローリィにも眠気誘う温かなな日差しが戻ってきたように思う。
けれど少し寂しくも思う。
グローリィにとって彼は他にないタイプの人間で、他にない自分を晒せる人間だ。
結局は相手が面白いとか相手が良いとかではなく、その相手に接している自分を見るのが面白いのだから、どこまでもグローリィには我しかないのだが。
「………。」
その点、今膝の上にいる青年には着飾れない。
自分が分からない。
ただ愛しい。
優しくしたい。
優しい時間を与えたいから、今も起こさないように気を使う。
見返りなど、求めずに。
これもある意味では無償の愛と言えるだろうか?聖職者でありながら務めないこの私が!、そう自身で思いながら笑ってしまう。
自然と唇を突いて溢れるその言葉は
「主よ、私は貴方より貴方の息子を愛してしまいます。」
愛の告白でありながら
「貴方が許される者を許す方ならばどうか」
背徳に塗れた懺悔
「貴方ではなくその息子にのみ祈りたがる私をお許し下さい。」
しかしその瞳には懺悔の気配はなく、心底愉しそうで
「ただし、私は一心に祈りましょう、誰よりもこの神に捧げましょう。誰にも成せなかったような目に見える程の信仰をしましょう。そしてお許し下さい、誰もが不純だと指差す私の信仰を、しかしこの思いは何よりも純粋なのです。
__amen.」
祈りもどこか押し付けがましく聞こえた。
そして祈る為に組んだ指はルァジノールの髪を絡めとっているのだ。
まるで逃がさないと捕えるように
何もかもが矛盾する、この青年の前では
何も分からなくなり、そして
少しずつ狂っていくのだ。
こんな温かな空気に抱かれれば睡魔に誘われもするだろう。
犬や猫のような小動物が寝そべり静かにうたた寝するのが似合う午後、グローリィの膝にて眠るのはそれではなく若いアサシン、もちろんルァジノールだ。真っ白な髪に温かな光が射し眩しく輝く。
彼が人前でも警戒を解けるようになったのは珍しいことではない。グローリィを始め何名も名前をあげられる、敵ではないと知れば彼は容易に警戒を解けるようになった。
しかしこんな午後にうたた寝するのは珍しい。
春の陽気のせいだろうか、瞼を重そうにしていたジノに、ひざ枕を知らなかったらしい彼に、提案してあっさりと寝付かせたのは数分前のことだ。
「良い夢を見ていますか、ジノ」静かに問い掛けても返事はない、余程深く寝入っている様子。
寝所でさえ微かな物音に跳び起きていた彼が深い眠りを覚えたというのは良い傾向だと思う。
そっと柔らかな白髪を指先で撫でた。
膝を愛しい人に占拠され、眠りの空気が取り巻く中にいて眠くならないはずはない。
「私は…」
しかし
「そろそろ、後ろから刺さる殺気が悪夢になって出てきそう…かな…」
子供なら泣き出し、大人なら固まり、動物なら逃げ出しそうな殺気を放ち、後ろから首筋に刃を突き付けてくるアサシンがいる。
どうやらグローリィの代わりに仕事に出ているルナティスから伝言を預かってきたらしい。
暗殺者と冒険者という違いはあれど同じ「アサシン」という称号を持つ立場であるヒショウにとってルァジノールは後輩であり弟か息子のような感情さえも持つ。
そんな彼に危険が迫ればヒショウ身体を張る。つまり現在危険であると見なされたのはグローリィで、先刻からずっとこんな調子で刃物を突き付けてきている。
それなのに何か文句の一つでも言おうとすれば
「静かにしろ、ジノが起きる。」
この状況でつまり膝の上のルァジノールを起こすなと言う。
「鬼ですか貴方。」
かと言っても彼は良識ある人間だと理解している。
ヒショウがそっくなくあたれるのは彼の恋人たるルナティスか、グローリィくらいのものだ。
目の前で恋人掠奪宣言をしたことで目の敵にされたのがきっかけとはいえ、ヒショウが素で対応する数少ない人間の内の一人に入っているのだと思えば気分は悪くない。
「先日、ジュノスというリキュールが手に入ったのですが」
本当は、好きでもない実家の力で取り寄せさせた。
ジュノーの特産にしようと現地の若者が開発したらしいのだが、新しくてまだ流通に乗っていない上に作れる数に限りがある珍しい代物。
それをグローリィ自身はそんなに興味はなかったし詳しく知らないのだが、ヒショウが気にかけていたというのは知っている。
「よかったら飲みますか。」
「………。」
ここで飲むと言えば自然とカタールを下げなければならなくなる。
しかし冷静を装った目が揺らいで唇が何か言いたげに緩められているのが面白かった。
ヒショウにとってグローリィが素で向き合える人間なら、グローリィにとってヒショウは心から興味を持てる人間だった。からかい甲斐があるし彼の造形の整った顔は好きだ。
また、自分が絶対に落とせない人間だと知っているからこそ
「お代はキス一回で良いですよ」
ふざけて言い寄れるというものだ。
「俺の愛刀とのキスだったら喜んで」
「…貴方、本当に近頃ドSですね。」
苦笑いするグローリィに怒りを見せ付けるようにカタールの刃先で肌を撫でる。
「……。」
それは脅しというには優しいものだと思う。
剣先でありながら刃を立てず剣の腹で肌を押すように撫でるだけ。
皮も切れないような脅し。
思わず笑いそうになる。
「…この子とキス、一回ですよね」
そう言うとヒショウは心底怪訝な顔をした。この子、とは一体誰を指すのか。キスを、と示したのはヒショウが手にしているカタールしかない。
つまりはそういうことだった。少し身体をずらして、首を傾けて唇をカタールに寄せて見せた。
ぎょっとしたものの、咄嗟にカタールを引いてしまわなかったのは流石というべきか。
既にカタールの刃先はグローリィの口の中にあったのだから、引いていたら彼の舌や唇を傷つけてしまうところだ。
刃に沿って舌を滑らせ、逃がさないと刃の反対を指で押さえる。
刃で噛まれて鳴った僅かな唾なりがカタールの声にも思えた。
ヒショウはどうにも動かせなくなり、奇行にでているグローリィをせめて傷付けないようにカタールを固定する。
「……もういい。」
ニヤリと笑みながらヒショウを見上げる、まるで挑発されるようだったがそれでも動けない。
遂に彼は根を上げた。
「分かったから、やめろ。」
放されたカタールは尖端だけなぶられ唾液にうっすらと濡れていた。
ヒショウは潔癖だと彼の恋人が言っていた気がしたので開放ついでに法衣の袖で拭ってやる。
もう脅す気も失せたらしく、カタールは腰の鞘に収められてカチンと小さく鳴いた。
「……では、私はまだジノといたいので」
少し彼の眠りが浅くなってきているようだが、それを猫を寝かしつけるように撫でてやる。
「夜、ルナティスも帰ってくる頃にそちらにお邪魔しますよ。」
「……。」
「警戒しなくても良いですよ。ジノに嫌な思いさせたくないのは、誰よりも私なんですから。」
まだ少し不満を残しながらも彼は背を向けて渋々といった様子で部屋を後にする。
彼がいなくなって、やっとグローリィにも眠気誘う温かなな日差しが戻ってきたように思う。
けれど少し寂しくも思う。
グローリィにとって彼は他にないタイプの人間で、他にない自分を晒せる人間だ。
結局は相手が面白いとか相手が良いとかではなく、その相手に接している自分を見るのが面白いのだから、どこまでもグローリィには我しかないのだが。
「………。」
その点、今膝の上にいる青年には着飾れない。
自分が分からない。
ただ愛しい。
優しくしたい。
優しい時間を与えたいから、今も起こさないように気を使う。
見返りなど、求めずに。
これもある意味では無償の愛と言えるだろうか?聖職者でありながら務めないこの私が!、そう自身で思いながら笑ってしまう。
自然と唇を突いて溢れるその言葉は
「主よ、私は貴方より貴方の息子を愛してしまいます。」
愛の告白でありながら
「貴方が許される者を許す方ならばどうか」
背徳に塗れた懺悔
「貴方ではなくその息子にのみ祈りたがる私をお許し下さい。」
しかしその瞳には懺悔の気配はなく、心底愉しそうで
「ただし、私は一心に祈りましょう、誰よりもこの神に捧げましょう。誰にも成せなかったような目に見える程の信仰をしましょう。そしてお許し下さい、誰もが不純だと指差す私の信仰を、しかしこの思いは何よりも純粋なのです。
__amen.」
祈りもどこか押し付けがましく聞こえた。
そして祈る為に組んだ指はルァジノールの髪を絡めとっているのだ。
まるで逃がさないと捕えるように
何もかもが矛盾する、この青年の前では
何も分からなくなり、そして
少しずつ狂っていくのだ。
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