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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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一瞬、目に入り気にかかったが、何故気にかかったかも分からなかったから視線を外した。
視線を戻した先では何故かレイヴァとルナティスが腕相撲をしている。
確かルナティスが腕相撲したいと言い出したが彼に叶うのはレイヴァくらいしかいない、よって仕方なくレイヴァが承諾して勝負が始まるところだ。

二人が押したり押されたりの攻防を繰り返していると、背後に人が寄ってきた気配を感じた。
振り返ると、先ほど一瞬だけ気になって視線を止めたハンターの女性だった。
彼女はまだ声も掛けていないのにヒショウを見て「やっぱり」と言いながら笑顔を浮かべた。

「私のこと、覚えてる?」

安っぽい軟派に使われそうなことを言って彼女は親しげにヒショウの顔を覗き込む。
メンバーは何事かと困惑しているが、1番困惑しているのはヒショウ自身だ。
覚えがない。
視線で「わからない」と告げながら、彼女を頭から足まで眺めてみた。
冒険者には珍しく化粧をしてアクセサリーをあしらい、筋肉より滑らかさが目立つスタイル。
細くくびれた腰には薔薇が絡んだ髑髏の入れ墨が佇む。
それを見て、思い出した。

「…思い出した。」

ヒショウはそう言うが、別に嬉しそうではなくかと言って嫌そうでもない。
友人にしては親しさはなく挨拶もない。
女性も親しげなのは言葉だけで態度はどこか他人行儀だ。

「お久しぶり、覚えてもらえてたなんてうれしいわ。」
「……。」

返す言葉に困っているヒショウを見て、彼女は笑いながら「相変わらずつれないわね」と呟く。
ハンターは視線を一瞬テーブルを囲む面々に向けたが、ヒショウのギルドメンバーと知りながら挨拶も無しにヒショウと近い距離で話す。

「ねえ、私最近ソロでつまらないのよ、よかったら今日か明日狩りにでも付き合ってくれない?場所はどこでもいいから。」
「生憎だが、もう相方がいる。」
ヒショウが即座に短くそう告げると、彼女は笑顔を削ぎ落として不機嫌そうに歪めた。

「ああ、そうゆうことね。わかった、また会った時退屈してたら付き合うわ。じゃあね」

彼女はそう言ってあっさりと背を向けた。

「……あの方は」

メルフィリアは独り言のように疑問を口にした。
それにヒショウが答えぬうちにマナが不機嫌そうにため息をついた。

「オイコラ、あの女が去り際に私の事に睨んだぞ。変な勘違いさせてんなよ。どーせ元カノだろ、一言弁解しろよ。」
「…別に、だからって手を出してくる程熱の入った女じゃない。」

ヒショウがばつが悪そうにしているのは、今はルナティスという恋人がいるからか、それとも余り人に自慢したくなるような女性ではなかったからか。

「…随分、ヒショウの好みから外れた人だね。」

恋人である自分のことを棚に上げて、意外にもルナティスがあの女性の話題に突っ込んでくる。
表向きはただ仲間の昔の事情を掘り起こして聞き出そうとしている野次馬のような雰囲気だが、下手をしたらヒショウとルナティスの間に何か問題が起きそうな危うさがある。

現在の恋人としては、昔の恋人の存在は気になると同時に不安を煽るものだろう。

「…お互い、本気じゃなかったからな。」

ヒショウは言いにくそうに眉をしかめるが、はぐらかしたりするとルナティスを不安にさせるだろうと事実を告げる。

「でも別に、狩りくらい付き合ってあげればいいんじゃないですか。ヒショウさんが浮気するなんて思ってませんよね、ルナティスさん?」
「浮気しないのは分かってるけど、さっきのあれ、つまりは誘ってたんじゃないの?」

白昼堂々のそんな発言に、一帯の空気が固まった。
どう聞いても普通の会話だったろうになんて解釈してるんだ、と皆が思ったが、ヒショウが否定しないのも気になった。

「ど、どう聞けばそうなるんですか?」
「だってーただの狩り仲間にしては距離が近いし元恋人にしては二人ともよそよそしいし、ヒショウが誘いを遠慮なくばっさり断るし。ていうか相方がいても狩りくらい付き合うでしょ、なのに向こうもあっさり諦めてたから。相方って恋人の代名詞だったんじゃないの?何よりヒショウってあーゆーあから様にフェロモン出してる女の人嫌いでしょ。あと貧乳の方が」
「そろそろ余計だ。」

要らない考察まで持ち出し始めてきたルナティスの頭にヒショウの平手打ちが入る。

「つまりはセフレかよー」

マナのあまりにストレートな言い方に、動揺した。
結構人前での発言に慎みがないのはマナとルナティスの似たところだ。

「……っ……ま、あ…そうなる、か…」
代わりにいい言葉が見つからず、ヒショウはしぶしぶ頷く。

「だよな。腹のあたり見て思い出してたし。」
「……。」
「ヒショウにも、そうゆう時があったんだなー。」
「…若気の至りだ。」
「男なら当然だろ。で、あの女の人のどこがよかったの?」

ルナティスを横目に盗み見ても、その顔に不機嫌さは見つけられない。
純粋に気になっているように見える。

「…どこも」
「……惚気?」

自分の発言は「あの女性の全てが好きだった」と捉えられたらしい。
慌てて首を振って否定した。

「どこも、好きなところがなかったから付き合った。お互い、本気になるつもりはなかったから。」
「ま、ちゃんとそーやって先のこと考えてるのはいいけどな?」

何かいいたげに口を出したマナはそこで言葉を濁した。
元から冷めていて熱くなる間もなかった相手だとしても、ルナティスは面白いはずがない。

ルナティスと腕相撲の姿勢のままでいるレイヴァが、勝負もしていないのにずっと腕を震わせている。
話している最中もルナティスがずっと強く握ってきているから、痛くないように対抗して握り返しているのだろう。
ヒショウはそんなルナティスの内面の怒りに気付かないが、知らなくて正解だ。



『………マナ、僕があの女の人殴りに行ったら止める?』

ルナティスとマナの互い間でしか聞こえない声で、そんな物騒な会話が成されていたとはその場の誰も思わなかった。

『止めて欲しいから聞いてんだろ?』
『まあねー』

勿論、未遂に終わったが
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