*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
*小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。
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*コメントでの感想なども歓迎です。
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思わず一週間も前から事前に約束を取り付けていた。
まめな性格ではないと自負しているのに、一週間後のその日は何時に待ち合わせて何時に何処へ行って何処で食事して…なんて細々したスケジュールを立てた。
確か兄が好きだったというレストランに予約までして。
そして待ち合わせた時間の十数分前に着き、待ち人は待ち合わせ時間の十分前ジャストに来た。
待ち合わせは時間の十分前に…というのが世間のマナー、と彼の保護者が教えていたが、本当に十分調度に合わせてしまうんだから彼にものを教えるのは難しい。
「ジノ、寒くないですか?」
『温まる』
私はそんなに温かくなるほど速足移動するつもりはないんですがね…。
いつもの装束にマントだけの格好。
流石に狩りの装備ではないが、オフにしては堅苦しい。
きっとマントの下には緊急用の短剣でも入っていることだろう。
「これを」
『?』
彼の首に私が着けていたマフラーを巻き付けて、ついでに耳あてを着けさせる。
『グローリィが、寒くなる』
「大丈夫ですよ、コートが温かいし。」
首元が寒いけれど、少し縮まっていればね。
「さて、早く行きましょうか、せっかくのクリスマスです。」
『グローリィ』
「はい?」
手を引いて、彼は着いてくるけれど怪訝な顔をしていた。
『クリスマス、とは、なんだ?』
「……?」
もしかして、クリスマスも知らなかったのだろうか。
『皆が何かを祝っている。でも楽しそうにして、祝っているものを知らない…』
いつも何かを聞く時に申し訳なさそうにする彼だが、今までいた境遇を考えれば無知が多いのは仕方ないことだし、寧ろ彼に何か教えてあげられるのは嬉しいと思う。
人のために動くのが大嫌いな私がそう思ってしまうような純粋さが、このアサシンにはある。
「クリスマスは、神と通じた偉大な人の誕生日をなのですよ。」
『他人の誕生日、なのか…』
「ええ、人々は皆その人の誕生日を祝い祈り、その人を通して神にも祈るのですよ」
『なら…』
ジノは少し唇を引き締めた。
彼なりの苦笑い。
『俺には必要ないな…』
ああ、またちょっと教え方を失敗したかもしれない。
私は引き腰になったジノの手を強く引いて更に歩き出す。
「今頃教会は人で溢れて昼夜問わずミサが行われています。」
今日は絶対に捕まりたくなかったから、私にしては珍しくそれはもう本当に珍しく正攻法で、ここ一週間友人達のミサの代理を引き受けて代わりとして彼等に今日の私の担当を分割して引き受けてもらったのだ。
だから今日は私は教会へ行くつもりはない。
「でも私は今日、教会に行かないし、ほら、町にも祈る人なんていないでしょう?」
周りは楽しそうに歩き行く家族や友人や恋人達。
いつものように冒険者の集まりも掃けている。
『何故』
「可哀相なことにクリスマスでのミサは人々には二の次にされているからですよ。」
『何故』
「いつの間にかクリスマスは、大事な人と過ごす、というのが習慣になったからです。」
少し考えて、そしてそれからジノは目を丸くして私を見た。
「皆が幸せそうなのは、きっと互いに大事な人だ、って確認しあっているからでしょうね。」
『………。』
私の言葉に、今度は問いはこなかった。
返されたのは沈黙と戸惑い。
「どうしました?」
何に彼が戸惑っているのか、そんなのは分かっているけれど。
焦らして聞き出す方が面白い。
『………俺で、いいのか。』
長い沈黙の末に帰って来たのは、また問い。
私はにっこり笑う。
そして繋いでいた彼の手に指を絡めて強く握りしめる。
これが、言葉よりも伝わる返事になればいい。
「…うん、大切だ、って分かればいいんですよね。形式とか、そんな特別なことも要らない、かな。」
『…?』
少し、クリスマスだからって硬くなっていた自分に気付いた。
ジノと過ごして、もっと近付きたいなんて欲張っていたから。
「とりあえず、何かお揃いのものが欲しいな」
『………。』
「そのまえにやっぱり私、首元が寒いから新しいマフラーを買おう。ああ、ジノにももっと綺麗な色のを。」
『………。』
「ついでにコートも買いましょうか。街中まで狩り用のマントだと少し歩きづらいですしね。」
『………。』
ジノから、言葉は帰って来ない。
けれど、私が何か言う度に賛同の代わりに僅かに力が篭る手が愛しい。
振り返れば、顔が赤い。
これは寒さばかりじゃない、と勝手に思うことにする。
「夕飯は何が食べたいですか?」
『…………。』
「クリスマスの定番というと、七面鳥とケーキですが…」
そう言うと、ジノは足を止めてまでの意思表示。
思わず吹きだしそうになった。
確か、ルナのギルドの子にクッキーを貰って大層気に入ったらしいですしね。
甘い物、やっぱり好きなんだなあ。
今まではそんな自分を知る機会もなくて。
真っさらだったこの子がどうなって行くのか、本当に楽しみだと思う。
そして、変わり行く彼の隣には必ず、私がいたい。
「ケーキ、買って帰りましょうか。」
そう言って歩き出すと、ジノも歩調を速めて私の隣を歩き出す。
『ありがとう』
まめな性格ではないと自負しているのに、一週間後のその日は何時に待ち合わせて何時に何処へ行って何処で食事して…なんて細々したスケジュールを立てた。
確か兄が好きだったというレストランに予約までして。
そして待ち合わせた時間の十数分前に着き、待ち人は待ち合わせ時間の十分前ジャストに来た。
待ち合わせは時間の十分前に…というのが世間のマナー、と彼の保護者が教えていたが、本当に十分調度に合わせてしまうんだから彼にものを教えるのは難しい。
「ジノ、寒くないですか?」
『温まる』
私はそんなに温かくなるほど速足移動するつもりはないんですがね…。
いつもの装束にマントだけの格好。
流石に狩りの装備ではないが、オフにしては堅苦しい。
きっとマントの下には緊急用の短剣でも入っていることだろう。
「これを」
『?』
彼の首に私が着けていたマフラーを巻き付けて、ついでに耳あてを着けさせる。
『グローリィが、寒くなる』
「大丈夫ですよ、コートが温かいし。」
首元が寒いけれど、少し縮まっていればね。
「さて、早く行きましょうか、せっかくのクリスマスです。」
『グローリィ』
「はい?」
手を引いて、彼は着いてくるけれど怪訝な顔をしていた。
『クリスマス、とは、なんだ?』
「……?」
もしかして、クリスマスも知らなかったのだろうか。
『皆が何かを祝っている。でも楽しそうにして、祝っているものを知らない…』
いつも何かを聞く時に申し訳なさそうにする彼だが、今までいた境遇を考えれば無知が多いのは仕方ないことだし、寧ろ彼に何か教えてあげられるのは嬉しいと思う。
人のために動くのが大嫌いな私がそう思ってしまうような純粋さが、このアサシンにはある。
「クリスマスは、神と通じた偉大な人の誕生日をなのですよ。」
『他人の誕生日、なのか…』
「ええ、人々は皆その人の誕生日を祝い祈り、その人を通して神にも祈るのですよ」
『なら…』
ジノは少し唇を引き締めた。
彼なりの苦笑い。
『俺には必要ないな…』
ああ、またちょっと教え方を失敗したかもしれない。
私は引き腰になったジノの手を強く引いて更に歩き出す。
「今頃教会は人で溢れて昼夜問わずミサが行われています。」
今日は絶対に捕まりたくなかったから、私にしては珍しくそれはもう本当に珍しく正攻法で、ここ一週間友人達のミサの代理を引き受けて代わりとして彼等に今日の私の担当を分割して引き受けてもらったのだ。
だから今日は私は教会へ行くつもりはない。
「でも私は今日、教会に行かないし、ほら、町にも祈る人なんていないでしょう?」
周りは楽しそうに歩き行く家族や友人や恋人達。
いつものように冒険者の集まりも掃けている。
『何故』
「可哀相なことにクリスマスでのミサは人々には二の次にされているからですよ。」
『何故』
「いつの間にかクリスマスは、大事な人と過ごす、というのが習慣になったからです。」
少し考えて、そしてそれからジノは目を丸くして私を見た。
「皆が幸せそうなのは、きっと互いに大事な人だ、って確認しあっているからでしょうね。」
『………。』
私の言葉に、今度は問いはこなかった。
返されたのは沈黙と戸惑い。
「どうしました?」
何に彼が戸惑っているのか、そんなのは分かっているけれど。
焦らして聞き出す方が面白い。
『………俺で、いいのか。』
長い沈黙の末に帰って来たのは、また問い。
私はにっこり笑う。
そして繋いでいた彼の手に指を絡めて強く握りしめる。
これが、言葉よりも伝わる返事になればいい。
「…うん、大切だ、って分かればいいんですよね。形式とか、そんな特別なことも要らない、かな。」
『…?』
少し、クリスマスだからって硬くなっていた自分に気付いた。
ジノと過ごして、もっと近付きたいなんて欲張っていたから。
「とりあえず、何かお揃いのものが欲しいな」
『………。』
「そのまえにやっぱり私、首元が寒いから新しいマフラーを買おう。ああ、ジノにももっと綺麗な色のを。」
『………。』
「ついでにコートも買いましょうか。街中まで狩り用のマントだと少し歩きづらいですしね。」
『………。』
ジノから、言葉は帰って来ない。
けれど、私が何か言う度に賛同の代わりに僅かに力が篭る手が愛しい。
振り返れば、顔が赤い。
これは寒さばかりじゃない、と勝手に思うことにする。
「夕飯は何が食べたいですか?」
『…………。』
「クリスマスの定番というと、七面鳥とケーキですが…」
そう言うと、ジノは足を止めてまでの意思表示。
思わず吹きだしそうになった。
確か、ルナのギルドの子にクッキーを貰って大層気に入ったらしいですしね。
甘い物、やっぱり好きなんだなあ。
今まではそんな自分を知る機会もなくて。
真っさらだったこの子がどうなって行くのか、本当に楽しみだと思う。
そして、変わり行く彼の隣には必ず、私がいたい。
「ケーキ、買って帰りましょうか。」
そう言って歩き出すと、ジノも歩調を速めて私の隣を歩き出す。
『ありがとう』
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