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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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聖と魔
相反するものでありながらも隣接している
そして互いを渇望するのだ

信仰心と聖に満ち溢れた教会は激しく荒廃している
何故ならば魔に食い荒らされたからである
魔が聖を食い求めたのである

そして今では魔の巣窟に


聖は美しく
魔もまた美しい

沈んだ世界には光がない
微かな光は満ちた闇にすぐに食われ果てる
そして闇は拡大していく



「悲しい仔らよ」

闇の中でぽつりと響く声
優しく聖を纏う声

闇を受け入れ闇を包もうと声は句となりやがて句は歌になる
聖歌が魔を掻き乱す


魔は躍動する
好物たる聖の生贄がそこにいる
やがて闇が集中していき闇が具現化する

ぐらりと闇が揺れて
入口からゆっくりと踏み込んでくる声の源たるプリーストの前に

何も知らぬ子供が学ぶ為に模擬するかのように
闇はプリーストを模っていく
シルエットを、痩身に
服を、プリーストの法衣に
髪を、長く束ねて
その色彩を、銀灰に
顔を、白い人形のように

そして恐怖しろと言わんばかりに魔の者は邪悪に笑む


だがそれに返される聖の者の笑みは違い優しい


「愛し仔らよ」

抱擁し口付けを与えんとばかりに腕を広げてみせる
邪悪な笑みを張り付けていた魔はそれを僅かに歪ませた

「愛が魔に毒であるなら我らは貴方を愛せない
しかし貴方は我らを確かに渇望している
そして我らも貴方を確かに愛しているのだ」

魔法のように祈りのように
愛の詞を囁く
魔は確かに聞いていた

「我らと貴方は毒である互いを求めている。
だが我らが交わればそこに生まれるのは――無」

プリーストは腰に挿していた杖を手にして構える
ただし横にして柄と先の飾りを持って
まるでその杖を差し出すように


「それでも何者も自身が真に求めるものには逆らえぬから」

プリーストは無防備なまま足を進めた
それをまた模擬するようにプリーストを模った魔も歩み寄る

互いに違う笑みをしながら


「互いに毒の杯を飲み干そう
互いに食い合おう
互いに奪い合おう」

聖には死を
魔には生を
そこに生まれる無を求めて…

二人のプリーストは杖を振るい、互いに相手の腹に向けて突き出す
そして
互いの腹を突き破る


「マグヌスエクソシズム!!」

その瞬間どこからともなく割り込んだ退魔の法によって
そこら一帯は光に包まれた



「何やら悪趣味な談話をしていたな」
短髪長身のプリーストがゴツイ杖を担いで教会内に入ってくる

魔が満ちていた教会はただの廃屋と化して
先まで輝くようだった妖しい闇の美は消え失せていた

「ええ、楽しませて貰いました」
「俺にはお前の話はさっぱりだったがな」
「でも、聞いてくれたでしょう。彼らは中々に頭が良く、貪欲ですからね」

「…あんな風に囮役やる奴は初めて見たぜ。」
「詠唱とめんどいんですもん」

「………………。にしても、腹までぶっ刺す必要があったのか」

銀杯のプリーストは杖で腹にあいた穴をヒールで癒していた
致命傷は外しているし、深く刺さる前に後ろの相棒が退魔を行ったので軽傷である

「逃げないように、念のためです…あと」




プリーストは、また先に魔に向けたような笑みを浮かべた。

――私も、魔が欲しかったんです
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