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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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ただヒショウに先頭を行かせるのではつまらない、と一つの部屋を一人が調べることにした。
そして見付けた人にはその人のご飯を皆でおごってやるとかなんとか決まった。

「セイヤー、そっち見つかったー?」
「見付かりません、というより怖くてなかなか探せません!」
今は向かい合わせに並ぶ部屋をセイヤとルナティスが探しているようだ。

ちなみにどちらの部屋も、踏み込む前にヒショウが一回りして探知済みである。
「ところでヒショウさん、取り付かれたこと、あるんですよね?」
二人の捜索を待つ間、メルフィリアが彼の隣に並び、小さく聞く。
霊の話をすると寄ってくるというのはよく言われる、それを気にしているのだろう。
小声にしたところで変わらぬだろうが。
「まあ、頻繁に。」
「ちょっとじゃないんですのね…。その取り憑かれるとどうなるのです?」
「…気分が悪くなったり感情が乱れるらしい。」
「らしい、って…ヒショウさんも取り憑かれた経験がお有りなんですよね?」
「俺は特異体質だ。」
ヒショウは何故か視線を宙に漂わせて呟くように回答する。
「暗殺者に不向きとされる体質で“傀儡”という。
憑かれるとそれの記憶や意識も入り込んで、完全にその人格になる。
昔、小さいアサシンギルドに“傀儡”のアサシンがいてその女が殺した奴らが彼女を使ってアサシンギルドを壊滅に追い込んだらしい。以来、傀儡は冒険者のアサシンにはなれても暗殺者にはなれない決まりだ。」そう言えば、ヒショウは昔アサシンギルドから暗殺者になれと命じられたらしい。
孤児上がりの冒険者には、どの職でもそういった裏の仕事を押し付けられることが今でもある。
一度命じられれば断ったりそこから抜けるのは難しい。
だがヒショウはたまたま“傀儡”だったからすぐに免除されたのだろう。そう容易に察することができた。

「…で、その“傀儡”って、かなり怖いのでは。」
「俺自信は意識がなくなる、怖くもなんともない。」


メルフィリアはしばし言葉を失い硬直した。
この男、繊細に見えてかなり図太いのでは。
それに怖がらないのは霊を信じていないとか慣れているとかではない、もう憑かれてもいいやといういい加減な認識のせいだ。
ルナティスとマナは、ヒショウがいればレーダー代わりになって安全とか吐かしていたが、実際もし霊的なものがいたらヒショウを介して直接危害を加えてこれるということだ。


「マナさん!!ふざけるなですわ!ヒショウさんがいたらもっとこの肝試し危険になりますわよ!」
普段はお嬢様口調を抑えているメルフィリアだが、肝試しに参加してからかなり動揺しているらしい。
「大丈夫大丈夫。幽霊ってのは見えないし手出し出来ないから怖いんだ。ヒショウに入っちまえばヒショウをボコればいいから。」
マナは実に爽やかに、力強く親指を立てた。

メルフィリアはヒショウにそれでいいのかと聞こうとしたが、やめた。
なんとなく答えは解る気がする。
『まあ、どうせその最中は意識ないから。』
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真っ暗な木造の屋敷を一同は進む。
ルナティスとセイヤが唱えるルアフの明かりが頭上から辺りを照らしているが、それでも通路の先や隅々までは照らせなくて、薄暗い奥にある暗闇から何かが出てくるのでは、と何も見えないより恐怖心を煽られる。
だがそれでも、意外にも一同の進む足は順調だ。
先頭を行くヒショウとルナティス、その後ろにいるマナがてくてく進んでいくからだ。
ウィンリーとレイヴァはこの手の恐怖に強いらしい。
メルフィリアとセイヤは酷く怯えているが、必死に着いていくので遅れはない。

「…皆さん、怖くないんですか?」
「も、もう少しゆっくり歩いて頂けません?」
震え上がっている二人をウィンリィが少し笑った。
「怖いもの置いてあるわけじゃないし、暗いだけじゃん。ちょっとビクビクしすぎだろ。」
「暗いだけで十分だよ…」
皆入る前は怖がっていたものの、ほとんどが入ってからはけろりとしているので、メンバーの声は比較的明るい。



「キャアアアッ!!」
突然、メルフィリアが悲鳴を上げて前を歩いていたマナに飛び付いた。
「あ、あのへんっ、女の人の顔があっ!」
震える彼女の様子に、セイヤとウィンリィまで怯えだしてしまった。
その方向へ、ヒショウが僅かに光る蛍石という発光石を掲げながらそちらへ歩いていった。
「……メルフィリア、ただの絵画だ。」
彼が照らしたのは可愛い女の子の肖像画。
薄暗いところで見るから不気味だが、日の下で見れば実にほほえましい絵画だろう。
「メル、お、脅かすなよっ…」
「だ、だって~」
涙ぐむ彼女に、マナが笑いながら頭を撫でてやった。「肝試しはこうじゃないとなー」
「ナイス、メル」
ルナティスは笑って彼女に向かって親指を起てた。



「う、うわっ!」
今度はウィンリィが声をあげた。
「そこに白いもやが」と言うが、またヒショウが確認すればただの壁のシミだった。
「アハハー、ウィンリィだって怖がりじゃないかー」
ルナティスが笑いながらそう言うと、ウィンリィは少しふて腐れた。
「ほらお前ら、根性ある二次職に育てよー。」
マナが笑いながらそんなことを言う。
ルナティスとマナには全く怯えた様子がなくて、怯えてばかりのメルフィリア達は彼らに感心していた。

「コホッ」
「「ひぎゃああああああああ!!!!!」」
突然、何かの小さな物音に二人はさっきとは打って変わり絶叫して泣き叫んだ。
「いやあああああ!!!??」
「うわあああああ!!!??」
「ぎゃあああ!!何何何イイイイ!!!」
それにつられて皆も叫びだし、その場が阿鼻叫喚となった。
「ちょ、なっ、ヒショウ、咳?ただの咳!?」
ルナティスが彼に詰め寄ると、彼はきょとんとして答えた。
「ああ、少し埃っぽくて。」
「脅かすなよっ!」
「そうだこの馬鹿!咳なんかすんな紛らわしい!」
メルフィリアとウィンリィの悲鳴は全くきにしなかったくせに、何故かルナティスとマナは過剰反応してヒショウの咳を責める。
「何だ、咳くらいで」
ヒショウの最もな反論に、マナが怒鳴った。
「お前がなんか行動するとシャレになんねーんだよ!自粛しろ!」
そう言って、またヒショウに前に進むように促した。
「ヒショウさんだとシャレにならない…って、ヒショウさんって霊感とかあるんですか?」
セイヤの質問に、彼は間髪置かずに「全然」と否定した。
「でもすぐにとり憑かれる癖がある。」



「……え。」
しばらく空気が固まった。
「つまり、ヒショウに何も異常がなけりゃここは安全ってことだ、なんかいたら真っ先にこいつが憑かれるから。」
笑いながらマナが説明する。
「まあ逆に、ヒショウに異常があったらここは危ないってことで、すぐに逃げようね!」
ルナティスが超にこやかな笑顔で言う。



「それって、攻略本見ながらゲームするのとおんなじようなものじゃないんですか…。」
「「先が分からないゲームは嫌い。」」
マナとルナティスの声がぴったり被った。
「肝試し行く人ー!」
「「「はーい!」」」


ルナティスの掛け声に子供のように…いや、実際子供なのだが、ギルドの一次職軍団が喜々として手を挙げた。

「なんでだよ…。」
「マナは行かないの?」
「行く」
彼女の目は後輩達より輝いていた。

「でもなんで急にそんなこと言い出したんです?」
「最近傭兵仕事ばっかで、大変だったろ?だから息抜きw」
「息詰まりそうですけどね」
そうは言うがセイヤも目は否定していない。

「でもなんで肝試しなんだ。」
「後輩に僕らの勇敢さを示す為!」
「…ルナティス、お前ホラー嫌いじゃなかったか。」
「僕が嫌いなのはスプラッタホラーです。それにヒショウが居てくれれば怖くない!」
「……俺は行かないぞ。」



「ヒショウ、お小遣あげるから。」
「いかねーとお前の財布は永久に帰ってこないぞ。」ルナティスとマナが何故か対象のことを口にしながら必死の形相でヒショウに詰め寄る。

「…明日返却の本があるから俺は行かな」
「ヒキコモリ反対ー!!!!!!」
「我らヒショウを自分の殻という檻から解き放ち隊ー!!!!!!」
あくまで行かないと言い張るヒショウに、ついに二人は力ずくという手段に出たのだった。



プロンテラは景気の波が激しく貧富の差も大きいものの平均的には裕福。
金持ちも多く、彼らの大きい屋敷も点在する。

それと同じくらいの数が少し街から離れた郊外にも点在する。
彼らの別荘であったり、街に屋敷を建てるより安上がりだからとそこを選び住む者だったり。

その中には完全に廃屋と化したものも多い。
そこが今回のスポットだという。

「てわけで、1番おどろおどろしたとこ選んでみました。」
ベストスポットを胸を張って紹介するルナティスに、皆が小さく拍手した。


確かに肝試しにはベストスポットだ。
しかし逆にそれは、普通に見ていて怖いということだ。
皆いざとなって震え上がっていた。
ルナティス本人でさえ、夜に来たことはなかったらしく、顔色が悪い。

「で、チーム分けするのか。」
その中で乗り気ではなかったヒショウが1番ケロッとしている。

「え、しないよ。」
「…まさか団体でぞろぞろ屋敷を徘徊するだけか?」

「なんかやな言い方だなあ。ちゃんとゴールに目印のガラス玉置いてきたよ。」「…じゃあお前はゴールの場所が分かってるのか。」
「いや、目隠ししながらテレポしてテキトーなとこに置いてきた。」

「…で、行動チームは?」
「みんな一緒。」
そこはあくまで譲らないらしい。


ヒショウは呆れ気味に「それじゃあ怖くないだろうが」と呟くが。
「この屋敷で少人数行動なんて怖くてできませんわ!」
「怖くないのはヒショウだけだ!」
「ガラスのハートをなめないでください!」
後輩軍団が食いかかった。
三人とも目が涙目だ。




かくして遠足のようにぞろぞろ続く肝試しは始まった。
「うりゃあ!」
杖を渾身の力を込めて振り下ろしてポリンを叩き潰す。
ピンクの物体は壊れたおもちゃみたいに弾けてバラバラになった。
そして地面に溶けてきえた。

「色気ない声」
そんな声がした方を見ると、坂の上から笑った絵が見下ろしてる。
その嘘の笑顔の下では本当に笑ってるのかな。

「力、はいんねーんだもん。」
「今からでも、マジシャンやめればいいじゃないか。」
「アンタはマジが好きなんだろ!」
「…多分」
「顔そらしてもどーせマスクで見えねーよ。嘘なんか見抜けねーよ。」
今、顔そらしたせいで分かったけど。

快晴、茂る草、そんな風景に彼の紫のアサシンの服は似合わないけど、うさん臭いスマイルマスクのせいでなんかしっくりきてる。不思議だ。

ポリンが落としたりんごをひろって、彼の隣に座った。
…おっきい。いや、俺が小さいのか。

「…?」
彼の膝の上にりんごを乗せた。
「やる。」
「ありー。」
赤いりんごは彼の両手の中に収まった。

「……。」
風が少し強いけど気持ちいい。
「……。」
さっきのポリンの生まれ変わりみたいに同じ顔した奴が目の前を跳ねてた。

「りんご、食わねーのかよ。」
「お前、マスク外させたいんだろ。」
「……チッ。」
マスクの下で笑い声がした。

意地悪で外さないかと思ったら、仮面は剥がされていきなり俺の膝の上に放られてきた。
「……。」
初めて見たわけじゃないけど、彼は今度はちゃんと人間の顔をしてりんごにかじりついていた。

「前衛になりたかったんだろ?」
「…違う、マジシャンがよかった。」
「才能ないって。向かないINT目指して立ち止まるより向いてる方になればいーじゃない。」
「……。」

分かってる。
本当はモンクとかクルセイダーとか、前衛で新二次職がよかったんだ。
でも、知り合いが彼はマジ好きだって言うから。

一緒に戦う仲間って思われるより、特別に扱われたいって思ったんだ…。

「…なあ。」
「ん?」
「殴りマジは好き?」
「全然嫌い」
「顔反らすなよ。」
好きなのか。

「あのね、なんでもかんでも俺の好みにするなって。」
「顔にやけてるぞ。」
「それはスマイルマスクだから。」
「スマイルマスクはまだ俺が持ってるし。」

これは突破口ができた。
俺は殴りマジになる!

「強い装備探してくる!」
「無理だって、殴りマジは効率悪いし大変だし。…別に好きじゃないって言ってるじゃないか。」
りんご食べ終わった彼は口元を拭って、スマイルマスクでまた顔を覆った。
さっき渡されたマスクはまだ俺の手の中だ、何枚持ってるんだ…。

また、彼の顔が見えなくなった。


「アンタはなんで俺に教えてくれないんだよ。」
「好みなら教えてるじゃないか。好きじゃないって。」
「嘘じゃんか!他の知らないマジにはすぐにときめいてるくせに!なんで俺だけ駄目なんだよっ!!」

喚きちらす声は、爽やかな空気に虚しく消える。

「…君の人生は君のなんだしさ。」

俺の叫んだ声はあっさり消えるのに、彼の呟く声は妙に響いてしっかり聞こえた気がした。
見上げるスマイルマスクはどこか悲しそうに笑ってる気がした。


「あ、おやつの時間だ。じゃっ!」
「え?っはあ!?」
目の前でいきなりスマイルマスクが消えた。
というか、俺とポリン以外の生き物はもういない。



「俺の人生、俺のだから…着いていきたいんじゃんか。」
俺の手に残されたスマイルマスクは、なんだが笑ってるように見えない、ただの飾り。




……なんかカレー臭い…朝食はカレーかよ。
ルナティス「シェイディ、いつの間にか知性派の参謀になったよね。」
シェイディ「それなりに努力した。」

ルナティス「参謀の心得は?」
シェイディ「敵の戦力も大事だが、何より味方の内部を見ることだ。」
ルナティス「例えばどんなところを?」

シェイディ「リーダー、1番の戦力、1番先頭で戦う者、1番扱いにくい問題児、そして俺自身が信頼できる人、このあたりを特に把握しておく。」

ルナティス「ちなみにリーダーは?」
シェイディ「レイ」←双子の姉

ルナティス「1番の戦力は?」
シェイディ「レイ」

ルナティス「切り込み隊長は?」
シェイディ「レイ」

ルナティス「1番の問題児は?」
シェイディ「レイ」

ルナティス「1番信頼できるのは?」
シェイディ「レイ」




ルナティス「…参謀の心得。結論“弟馬鹿であれ”」
シェイディ「待て」
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