*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
*小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。
*かなりぶつ切りです。
*携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)
*携帯にも対応しています。
*コメントでの感想なども歓迎です。
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外は雨。
彼は窓際で水色の紙を見ていた。
「手紙ですか?」
「ああ。水色の髪の可愛い子から。」
「女の子ですか?」
「ええ。」
彼はいつもにこにこしていて、丁寧な物腰で、感情がないと思う。
司祭であるくせに彼の言葉に神の愛はないと思う。
先輩に対して罰当たりなことだが、思うのだから仕方ない。
「…ラブレターですかね?」
ずっと読んでるくせに、その内容が理解できないとばかりに司祭は首をかしげる。
雨の湿気のせいか、いつもより艶の鈍い銀髪が肩から落ちた。
「でしょうよ。」
「でも、付き合ってくださいとかいう言葉は無いんですよ。」
「思いを告げるだけでも立派なラブレターでしょ。」
「…無欲ですねえ、可愛い子だ。」
まるで恋人から貰った手紙のように、それにキスをして丁寧にたたみ直す。
いつだったかこの司祭、男が好きだと自分で言っていた気がする。
「コーヒー、飲みますか。」
「ああ、ありがとう。」
「ブラック、好きですか?」
「好きですよ。」
この間は自分はものすごい甘党だと言っていた気がする。
でも、差し出したコーヒーをとてもおいしそうに飲んだ。
机の上に本があった。
昨日読んでいた小説とは違う、哲学の書。
昨日、その本について問うたら、笑いながら小説の登場人物やストーリーについて子供のように無邪気に語って「何度読んでも面白い」と言っていた。
あと、部屋の中には必ず何かしらの花が生けてある。
昨日は確か小さい薔薇だった。その前は蘭。デージーなんて日もあっただろうか。
今日は彼岸花。
「彼岸花…。」
「ええ、好きなんです。」
前の花の時と全く同じことを言う。
「司祭」
「はい。」
「司祭に嫌いなものってありますか?」
「たくさんありますよ。」
「何ですか?」
「何でしょうね。」
はぐらかされた。
彼が何かを嫌いだと言ったところを聞いたことが無い。
昔はただ「何でも好きになれる、いい人なんだろう」と思った。
けれど最近おかしいと思い始めた。
異様なまでに嫌いなものがないのである疑惑が浮かんだ。
本当は、好きなものこそ彼にはないんじゃないか。
――司祭に嫌いなものってありますか?
――たくさんありますよ。
好きなものも、たくさんあるという。
おそらく、好きなもの=嫌いなもの、だ。
「司祭」
「ん?」
「無趣味ですね。」
「?」
彼はきょとん、として
でも、肯定するようにまたにっこりと笑った。
しばらくして、彼は仕事に飽きたらしい。
晴れた青空が大好きだと言っていた彼は
大雨が大好きだからと言って
傘もささずに教会を飛び出した。
そして自分はというと
彼を追いかけて傘を1つ余計に持って雨の中をさ迷い歩いている。
雨の中、傘もささずに歩く銀長髪の司祭なんてのは目立つらしく、道行く人に聞けばすぐに分かった。
そして辿り着いたのは、大通りの端、少し人足の少ないスペースで
あの司祭は知らない青年に抱きついていた。
白い髪に白い肌にどこか物憂げで繊細そうな青年、けれど服はアサシン装束。
どこかで同僚が見たらお叱りを受けるだろうに、と他人事のように思った。
そして人目も憚らず、髪を撫でて頬や額にキスをしている。
明らかに他人や友人のスキンシップではない。
そして何より
初めて、あの司祭の本当の笑顔を見た気がする。
もう付き合いが長いから分かる、あの青年こそがあの司祭の“本当に好きなもの”だ。
その時何故か、自分はそこから逃げ出した。
優越感をぶち壊された。
優越感?自分は何に優越していたのだろう。
あの司祭は自分に好きだとは言ってくれなかった。
だって、自分から聞いていないから。
怖くて、聞いていないから。
笑いながら「好きですよ」と言うに決まっているんだ。
嘘ばかり言うその唇で。
この感情は、嫉妬だろうか。
どうやら彼とずっと一緒にいて(といっても職場だけだが)
ずっと彼と話していて(すべて嘘だろうが)
彼と言う人間を理解した気でいた。(嘘つきだということだけだが)
彼は何も好きにならない、つまりは
僕より上もいないのだと安心していたんだ。
「司祭。」
「はい。」
今日は晴れ、また彼の好きな天気。
手元には好きなレモンティーを置いて、仕事をするふりをしてはその大半を好きな論文を読んで時間を潰している。
「前に貴方は無趣味だって言ったけど、訂正します。」
「はあ。」
「単に、1つのことに気が向くと、他はどーでもよくなるんですね。」
そう言うと、彼はしばらく無表情になった。
勘に触ることを、言っただろうか。
不意に彼は立ち上がって、こちらに近づいてくる。
目の前に立って、顔を近づけてくる。
そして浮かべた笑みは…
いつもの嘘と、あのときの本当とは少し違った。
なんだ、この悪女みたいな顔は。
「正解。」
そう言って
下唇の端だけにキスをされる。
「!!!?!!?!?!?」
おもわず変な悲鳴をあげそうになって、自分はバックステップした。
いや、自分は聖職者であってアサシンのスキルなど使えるわけではないが。
「君こそ、僕の何にも興味ないのかと思いきや、いろいろ見てたんですね。」
いつもの、どこか謎めいた司祭とは違って、普通にいたずらっ子な青年になっている。
彼は笑いながら自分の肩をぽんぽんとたたいてくる。
その反応は
素直に、うれしかった。
そして後日、彼は気に入った相手には過剰なセクハラをしてくるセクハラ上司だということを知った。
知りたくもなかった。
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こんにちは、クリスマスです。
じゃない間違えた、いやしけいです。
私はただいまクリスマスパーティーの準備をしております。
まあ、まだお昼ですから、のんびりと飾りつけですがね。
せっかくですからアサさんと騎士さんも誘いたいと思いましたが、なんだか朝からにゃんにゃんしてそうな気がしたのでやめておきましょう。
クリスマスパーティーは去年もしましたしね。
アサさんには騎士さんの生贄…ではなく、クリスマスデートでもね、二人きりでしていて貰いましょう。
…………はっ
しまった…実は私、今はルナティックなのです。
飾りが小さいから口にくわえて秘技・耳コプターで飛翔して付けていけたのですが…
クリスマスツリーのてっぺんの星…おっきくてくわえて飛べない…
「なんの!!これで諦めてどうするいやしけい!
お前は名前こそ癒し系だが実は気合い系だ!!
いくぞおおお!!!」
気合いを入れて星にかじりつき、前歯を星に食い込ませて
いざ、耳回転!!!
はっ
は、歯がもげるもげるうぅぅうう
「わ、わ!どうしたいやしけい!」
床付近を飛んでばたばたしている私を見つけ、買い物から帰ってきたご主人が飛んできてくれました。
「い、いやしけいが!ほ、星に食われてるううぅぅうう!!!!!!!!!」
「ひゃなふて!わはひはふっへふんへふは!」(じゃなくて、わたしがくってるんですが)
「へ、と、取れなくなってるのか?」
そう、ご主人に気付かれて飛ぶのを諦めたはいいものの
気合いを入れて噛みすぎたせいで食いついたまま取れなくなってしまったのです…
「ごひゅひん~」
「しゃべるなって!歯が星に食い込んだのか、今とってやるからなっ」
あいたたたたたたた
スポッ
「よ、よかった、とれた……」
「全く、びっくりしたぞいやしけい。星なら俺が飾りつけてやるのに。」
「ご主人が帰ってくる前に完成させたくて…」
人間の姿ならもっと楽だったでしょうが、去年は人間の姿でクリスマスを過ごしたので、今年はルナティックなのです。
「ご主人、ご主人」
「ん?何だ?」
「ワインだけでケーキは買って来なかったんですか?」
買い物に行ってくるというからてっきりケーキやお肉を買ってくるものだと…
あ、お肉は私が狩ったサスカッチのお肉の保存がありましたね。
「ふふふ…ケーキはなあ、とっておきがあるんだぞ…!」
ご主人は誇らしげに笑い、そしてキッチンに走っていきました。
そしてすぐに帰ってきたご主人の手には
「じゃーん!!」
「うおおおおお!!!!?」
あ、あらやだ、うおーなんて言ってしまいました。
ご主人の手のにはホールケーキ、しかも真ん中にはルナティックな私がスポンジの塊で作られているのです!!!
しかもほのかに甘く香るこれは…!!
「に、にんじんの、ケーキですくあ!!」
「そうそう、一生懸命作ったんだぜ~おまえがお昼寝してる時とかに!」
それで最近よくキッチンが汚れてたんですね。
ご主人…愛を、愛を感じます…!!!
はああああっ!
耳コプター!!!
「おっ」
飛んでご主人の肩に着地!
そして
「ありがとうございます、ご主人。大好きです! 」
ご主人の頬っぺたにキスをしてほお擦りしました。
くすぐったがって、危うくケーキを落としそうになったので、ケーキをテーブルに置くまで一旦待ちました。
そしてもう一度ほお擦り。
「あ!あとペット用のサンタ衣装があったから買ってみたんだ!」
「まったくもーコスプレがお好みなんて、ご主人たらコアですね。」
とか怪しく言ってみたり。
ああ、早く夜が楽しみだなあ
二人のパーティーなのに、こんなにもうきうきするなんて。
人間の文化って、素敵ですっ
「恋人がサンタクロース♪背の高いサンタクロース♪」
「ごめんなさい、背、高くないですよう…」
「えっ、いや、これはそーゆーんじゃなくて、な!?」
じゃない間違えた、いやしけいです。
私はただいまクリスマスパーティーの準備をしております。
まあ、まだお昼ですから、のんびりと飾りつけですがね。
せっかくですからアサさんと騎士さんも誘いたいと思いましたが、なんだか朝からにゃんにゃんしてそうな気がしたのでやめておきましょう。
クリスマスパーティーは去年もしましたしね。
アサさんには騎士さんの生贄…ではなく、クリスマスデートでもね、二人きりでしていて貰いましょう。
…………はっ
しまった…実は私、今はルナティックなのです。
飾りが小さいから口にくわえて秘技・耳コプターで飛翔して付けていけたのですが…
クリスマスツリーのてっぺんの星…おっきくてくわえて飛べない…
「なんの!!これで諦めてどうするいやしけい!
お前は名前こそ癒し系だが実は気合い系だ!!
いくぞおおお!!!」
気合いを入れて星にかじりつき、前歯を星に食い込ませて
いざ、耳回転!!!
はっ
は、歯がもげるもげるうぅぅうう
「わ、わ!どうしたいやしけい!」
床付近を飛んでばたばたしている私を見つけ、買い物から帰ってきたご主人が飛んできてくれました。
「い、いやしけいが!ほ、星に食われてるううぅぅうう!!!!!!!!!」
「ひゃなふて!わはひはふっへふんへふは!」(じゃなくて、わたしがくってるんですが)
「へ、と、取れなくなってるのか?」
そう、ご主人に気付かれて飛ぶのを諦めたはいいものの
気合いを入れて噛みすぎたせいで食いついたまま取れなくなってしまったのです…
「ごひゅひん~」
「しゃべるなって!歯が星に食い込んだのか、今とってやるからなっ」
あいたたたたたたた
スポッ
「よ、よかった、とれた……」
「全く、びっくりしたぞいやしけい。星なら俺が飾りつけてやるのに。」
「ご主人が帰ってくる前に完成させたくて…」
人間の姿ならもっと楽だったでしょうが、去年は人間の姿でクリスマスを過ごしたので、今年はルナティックなのです。
「ご主人、ご主人」
「ん?何だ?」
「ワインだけでケーキは買って来なかったんですか?」
買い物に行ってくるというからてっきりケーキやお肉を買ってくるものだと…
あ、お肉は私が狩ったサスカッチのお肉の保存がありましたね。
「ふふふ…ケーキはなあ、とっておきがあるんだぞ…!」
ご主人は誇らしげに笑い、そしてキッチンに走っていきました。
そしてすぐに帰ってきたご主人の手には
「じゃーん!!」
「うおおおおお!!!!?」
あ、あらやだ、うおーなんて言ってしまいました。
ご主人の手のにはホールケーキ、しかも真ん中にはルナティックな私がスポンジの塊で作られているのです!!!
しかもほのかに甘く香るこれは…!!
「に、にんじんの、ケーキですくあ!!」
「そうそう、一生懸命作ったんだぜ~おまえがお昼寝してる時とかに!」
それで最近よくキッチンが汚れてたんですね。
ご主人…愛を、愛を感じます…!!!
はああああっ!
耳コプター!!!
「おっ」
飛んでご主人の肩に着地!
そして
「ありがとうございます、ご主人。大好きです! 」
ご主人の頬っぺたにキスをしてほお擦りしました。
くすぐったがって、危うくケーキを落としそうになったので、ケーキをテーブルに置くまで一旦待ちました。
そしてもう一度ほお擦り。
「あ!あとペット用のサンタ衣装があったから買ってみたんだ!」
「まったくもーコスプレがお好みなんて、ご主人たらコアですね。」
とか怪しく言ってみたり。
ああ、早く夜が楽しみだなあ
二人のパーティーなのに、こんなにもうきうきするなんて。
人間の文化って、素敵ですっ
「恋人がサンタクロース♪背の高いサンタクロース♪」
「ごめんなさい、背、高くないですよう…」
「えっ、いや、これはそーゆーんじゃなくて、な!?」
不意に目が覚めたのは、寝付いてから2、3時間経った頃だった。
外はまだ明け方だ。
隣で寝てる男からはまだ石鹸の匂いがする。
終わると必ず念入りに身体洗うしな。
ただ処理してるだけと思って置こう。
俺に触られるのが煩わしいから、だったらムカつく。
数発殴りたくなる。
彼は俯せてこちらに白髪の後頭部を向けている。
上半身を起こして彼の横顔を上から覗き込んだ。
無防備に寝ている。
何だって男の寝てる姿一つにこんな興奮するんだかな…俺は。
美女が裸で寝てたとかなら男としちゃ当然だろうに。
肩に唇を寄せて軽く口付けて、頬の辺りにも口付けてみる。
石鹸の香りが強くなる。
「朝からサカるな、発情犬か。」
掠れ声の彼は隠れるように、二の腕あたりまで下がっていた布団を首あたりまで引き上げた。
だが残念、同じ布団に俺も入っているから意味がない。
「狸寝入りか?」
「お前が起こしたんだろ。」
眉を潜めて横目に睨んでくる碧い瞳。
そこに口付けようとしたら当然ながら瞼が降りて、睫毛が唇にあたる。
舌を割り入れて眼球まで舐めてやろうかと思ったが、朝からコイツの鉄拳は喰らいたくないからやめておこう。
顔を覗き込むのはやめて白い背中に身体を密着させた。
こちらの方が体温は高いらしい。
熱が彼の体に吸い取られていく。
「………。」
熱苦しい、と払われなかったのは彼が少し寒かったからだろう。
だが
「足に当たってんだよ。」
流石にこっちは文句言われるか。
仕方ないだろう、お前が俺を興奮させてんだから。
「今日、夕飯どうするよ。」
「は?」
「今年は、あのローグとウサギプリにゃ誘われてねーんだろ?」
「………ああ、今日はイヴか。」
忘れてたか。
まあ、数日前にもうすぐクリスマスだな、なんて呟きあってそれきり、話題にも出ずにすっかり忘れてたからな。
たまたま窓の外からどっかの吟遊詩人のクリスマスソングが聞こえたから思い出しただけだ。
「今日くらいは、一日お前の時間俺に当ててくれるだろ?」
「いつもやってるだろ」
「狩りとか関係なく、だ。」
同居する前は俺がしつこく誘って一緒に出掛けたりしたもんだが、いつも一緒となるとどこかへ出掛けたりすることもなくなる。
ただ別々に狩りに行く。
残念ながらコイツとは狩場の好みが合わないからな。
「…そういや」
腕の中で彼がもそもそ動き、壁の方を見上げている。
「明日は、ギルドのクリスマスパーティーだな」
「…ああ」
「ならクリスマス気分で出掛けるのは明日でいいだろ。飯も普通で。」
……寒いから出掛けるのが面倒なんだろう。
彼は眠たそうに目を擦り布団を被った。
「OK、じゃあ一日中俺とベッドの中で文句ねえな。」
「は?」
たっぷり時間をおいて、嫌な予感を感じ取っただろう瞬間に、俺は脱力していた細い足を引っつかんだ。
そんで、日が傾く頃には
彼は厚着をしてふらふらになりながら渋々と活気ある街を歩くのだった。
外はまだ明け方だ。
隣で寝てる男からはまだ石鹸の匂いがする。
終わると必ず念入りに身体洗うしな。
ただ処理してるだけと思って置こう。
俺に触られるのが煩わしいから、だったらムカつく。
数発殴りたくなる。
彼は俯せてこちらに白髪の後頭部を向けている。
上半身を起こして彼の横顔を上から覗き込んだ。
無防備に寝ている。
何だって男の寝てる姿一つにこんな興奮するんだかな…俺は。
美女が裸で寝てたとかなら男としちゃ当然だろうに。
肩に唇を寄せて軽く口付けて、頬の辺りにも口付けてみる。
石鹸の香りが強くなる。
「朝からサカるな、発情犬か。」
掠れ声の彼は隠れるように、二の腕あたりまで下がっていた布団を首あたりまで引き上げた。
だが残念、同じ布団に俺も入っているから意味がない。
「狸寝入りか?」
「お前が起こしたんだろ。」
眉を潜めて横目に睨んでくる碧い瞳。
そこに口付けようとしたら当然ながら瞼が降りて、睫毛が唇にあたる。
舌を割り入れて眼球まで舐めてやろうかと思ったが、朝からコイツの鉄拳は喰らいたくないからやめておこう。
顔を覗き込むのはやめて白い背中に身体を密着させた。
こちらの方が体温は高いらしい。
熱が彼の体に吸い取られていく。
「………。」
熱苦しい、と払われなかったのは彼が少し寒かったからだろう。
だが
「足に当たってんだよ。」
流石にこっちは文句言われるか。
仕方ないだろう、お前が俺を興奮させてんだから。
「今日、夕飯どうするよ。」
「は?」
「今年は、あのローグとウサギプリにゃ誘われてねーんだろ?」
「………ああ、今日はイヴか。」
忘れてたか。
まあ、数日前にもうすぐクリスマスだな、なんて呟きあってそれきり、話題にも出ずにすっかり忘れてたからな。
たまたま窓の外からどっかの吟遊詩人のクリスマスソングが聞こえたから思い出しただけだ。
「今日くらいは、一日お前の時間俺に当ててくれるだろ?」
「いつもやってるだろ」
「狩りとか関係なく、だ。」
同居する前は俺がしつこく誘って一緒に出掛けたりしたもんだが、いつも一緒となるとどこかへ出掛けたりすることもなくなる。
ただ別々に狩りに行く。
残念ながらコイツとは狩場の好みが合わないからな。
「…そういや」
腕の中で彼がもそもそ動き、壁の方を見上げている。
「明日は、ギルドのクリスマスパーティーだな」
「…ああ」
「ならクリスマス気分で出掛けるのは明日でいいだろ。飯も普通で。」
……寒いから出掛けるのが面倒なんだろう。
彼は眠たそうに目を擦り布団を被った。
「OK、じゃあ一日中俺とベッドの中で文句ねえな。」
「は?」
たっぷり時間をおいて、嫌な予感を感じ取っただろう瞬間に、俺は脱力していた細い足を引っつかんだ。
そんで、日が傾く頃には
彼は厚着をしてふらふらになりながら渋々と活気ある街を歩くのだった。
今日は何処にも行かないことにした。
俺が部屋出なければ、ルナティスもたいてい部屋を出ない。
俺が少し音や言葉が欲しい時はルナティスがくれる。
本を読んでいる時は彼も読む。
「本、取って」
「どれがいい」
「んー…ゾルーク、ハーン、アシェラルド以外」
同じ部屋、隣で読書していても案外彼とは本の趣味が合わない。
心理学、哲学、叙情詩、その辺り、純文学的なものを彼はあまり読まない。
好むのは随筆、歴史書、論文、小説の類だ。
「昨日、詩集を買ったが。」
「詩はいいよ。」
「嫌いなのか。」
「嫌いじゃないよ、詩って詩人の人生の大事な所の切り貼りだったりするし、共感反感にしろあれこれ考えさせられるから面白い。」
彼が前半口にしたのは、有名な詩人の明言だ。
やっぱり、結構好きなんじゃないか。
「ならなんで読まないんだ。」
「考えさせられて、自分の在り方を疑問に思うから。」
思わず、黙り込んでしまった。
彼を凝視してしまう。
ルナティスは微笑んで、棚にある本から作家を名指しして小説を指名した。
「僕は、何も考えずに僕でいたいんだよ。
結局僕であることに変わりはないのに、名著書である程考えさせられるから。」
“何も考えずに居るようで
実は彼は誰よりも考えている。
詩を読まないのは
彼自身が既に詩的であるからじゃないか。”
俺は低知能な頭でそんな事を思った。
ルナティスは小説を読みながら、俺と肩が触れ合うところにいる。
本を読みながら、思考には常に俺を置いて。
決して他人が綴った文章には、他人が本に込めた思いには飲み込まれないのだ。
____________
ゲーテの詩を読んでいたら何となく
詩的な流れにしたくなった。
俺が部屋出なければ、ルナティスもたいてい部屋を出ない。
俺が少し音や言葉が欲しい時はルナティスがくれる。
本を読んでいる時は彼も読む。
「本、取って」
「どれがいい」
「んー…ゾルーク、ハーン、アシェラルド以外」
同じ部屋、隣で読書していても案外彼とは本の趣味が合わない。
心理学、哲学、叙情詩、その辺り、純文学的なものを彼はあまり読まない。
好むのは随筆、歴史書、論文、小説の類だ。
「昨日、詩集を買ったが。」
「詩はいいよ。」
「嫌いなのか。」
「嫌いじゃないよ、詩って詩人の人生の大事な所の切り貼りだったりするし、共感反感にしろあれこれ考えさせられるから面白い。」
彼が前半口にしたのは、有名な詩人の明言だ。
やっぱり、結構好きなんじゃないか。
「ならなんで読まないんだ。」
「考えさせられて、自分の在り方を疑問に思うから。」
思わず、黙り込んでしまった。
彼を凝視してしまう。
ルナティスは微笑んで、棚にある本から作家を名指しして小説を指名した。
「僕は、何も考えずに僕でいたいんだよ。
結局僕であることに変わりはないのに、名著書である程考えさせられるから。」
“何も考えずに居るようで
実は彼は誰よりも考えている。
詩を読まないのは
彼自身が既に詩的であるからじゃないか。”
俺は低知能な頭でそんな事を思った。
ルナティスは小説を読みながら、俺と肩が触れ合うところにいる。
本を読みながら、思考には常に俺を置いて。
決して他人が綴った文章には、他人が本に込めた思いには飲み込まれないのだ。
____________
ゲーテの詩を読んでいたら何となく
詩的な流れにしたくなった。
思わず一週間も前から事前に約束を取り付けていた。
まめな性格ではないと自負しているのに、一週間後のその日は何時に待ち合わせて何時に何処へ行って何処で食事して…なんて細々したスケジュールを立てた。
確か兄が好きだったというレストランに予約までして。
そして待ち合わせた時間の十数分前に着き、待ち人は待ち合わせ時間の十分前ジャストに来た。
待ち合わせは時間の十分前に…というのが世間のマナー、と彼の保護者が教えていたが、本当に十分調度に合わせてしまうんだから彼にものを教えるのは難しい。
「ジノ、寒くないですか?」
『温まる』
私はそんなに温かくなるほど速足移動するつもりはないんですがね…。
いつもの装束にマントだけの格好。
流石に狩りの装備ではないが、オフにしては堅苦しい。
きっとマントの下には緊急用の短剣でも入っていることだろう。
「これを」
『?』
彼の首に私が着けていたマフラーを巻き付けて、ついでに耳あてを着けさせる。
『グローリィが、寒くなる』
「大丈夫ですよ、コートが温かいし。」
首元が寒いけれど、少し縮まっていればね。
「さて、早く行きましょうか、せっかくのクリスマスです。」
『グローリィ』
「はい?」
手を引いて、彼は着いてくるけれど怪訝な顔をしていた。
『クリスマス、とは、なんだ?』
「……?」
もしかして、クリスマスも知らなかったのだろうか。
『皆が何かを祝っている。でも楽しそうにして、祝っているものを知らない…』
いつも何かを聞く時に申し訳なさそうにする彼だが、今までいた境遇を考えれば無知が多いのは仕方ないことだし、寧ろ彼に何か教えてあげられるのは嬉しいと思う。
人のために動くのが大嫌いな私がそう思ってしまうような純粋さが、このアサシンにはある。
「クリスマスは、神と通じた偉大な人の誕生日をなのですよ。」
『他人の誕生日、なのか…』
「ええ、人々は皆その人の誕生日を祝い祈り、その人を通して神にも祈るのですよ」
『なら…』
ジノは少し唇を引き締めた。
彼なりの苦笑い。
『俺には必要ないな…』
ああ、またちょっと教え方を失敗したかもしれない。
私は引き腰になったジノの手を強く引いて更に歩き出す。
「今頃教会は人で溢れて昼夜問わずミサが行われています。」
今日は絶対に捕まりたくなかったから、私にしては珍しくそれはもう本当に珍しく正攻法で、ここ一週間友人達のミサの代理を引き受けて代わりとして彼等に今日の私の担当を分割して引き受けてもらったのだ。
だから今日は私は教会へ行くつもりはない。
「でも私は今日、教会に行かないし、ほら、町にも祈る人なんていないでしょう?」
周りは楽しそうに歩き行く家族や友人や恋人達。
いつものように冒険者の集まりも掃けている。
『何故』
「可哀相なことにクリスマスでのミサは人々には二の次にされているからですよ。」
『何故』
「いつの間にかクリスマスは、大事な人と過ごす、というのが習慣になったからです。」
少し考えて、そしてそれからジノは目を丸くして私を見た。
「皆が幸せそうなのは、きっと互いに大事な人だ、って確認しあっているからでしょうね。」
『………。』
私の言葉に、今度は問いはこなかった。
返されたのは沈黙と戸惑い。
「どうしました?」
何に彼が戸惑っているのか、そんなのは分かっているけれど。
焦らして聞き出す方が面白い。
『………俺で、いいのか。』
長い沈黙の末に帰って来たのは、また問い。
私はにっこり笑う。
そして繋いでいた彼の手に指を絡めて強く握りしめる。
これが、言葉よりも伝わる返事になればいい。
「…うん、大切だ、って分かればいいんですよね。形式とか、そんな特別なことも要らない、かな。」
『…?』
少し、クリスマスだからって硬くなっていた自分に気付いた。
ジノと過ごして、もっと近付きたいなんて欲張っていたから。
「とりあえず、何かお揃いのものが欲しいな」
『………。』
「そのまえにやっぱり私、首元が寒いから新しいマフラーを買おう。ああ、ジノにももっと綺麗な色のを。」
『………。』
「ついでにコートも買いましょうか。街中まで狩り用のマントだと少し歩きづらいですしね。」
『………。』
ジノから、言葉は帰って来ない。
けれど、私が何か言う度に賛同の代わりに僅かに力が篭る手が愛しい。
振り返れば、顔が赤い。
これは寒さばかりじゃない、と勝手に思うことにする。
「夕飯は何が食べたいですか?」
『…………。』
「クリスマスの定番というと、七面鳥とケーキですが…」
そう言うと、ジノは足を止めてまでの意思表示。
思わず吹きだしそうになった。
確か、ルナのギルドの子にクッキーを貰って大層気に入ったらしいですしね。
甘い物、やっぱり好きなんだなあ。
今まではそんな自分を知る機会もなくて。
真っさらだったこの子がどうなって行くのか、本当に楽しみだと思う。
そして、変わり行く彼の隣には必ず、私がいたい。
「ケーキ、買って帰りましょうか。」
そう言って歩き出すと、ジノも歩調を速めて私の隣を歩き出す。
『ありがとう』
まめな性格ではないと自負しているのに、一週間後のその日は何時に待ち合わせて何時に何処へ行って何処で食事して…なんて細々したスケジュールを立てた。
確か兄が好きだったというレストランに予約までして。
そして待ち合わせた時間の十数分前に着き、待ち人は待ち合わせ時間の十分前ジャストに来た。
待ち合わせは時間の十分前に…というのが世間のマナー、と彼の保護者が教えていたが、本当に十分調度に合わせてしまうんだから彼にものを教えるのは難しい。
「ジノ、寒くないですか?」
『温まる』
私はそんなに温かくなるほど速足移動するつもりはないんですがね…。
いつもの装束にマントだけの格好。
流石に狩りの装備ではないが、オフにしては堅苦しい。
きっとマントの下には緊急用の短剣でも入っていることだろう。
「これを」
『?』
彼の首に私が着けていたマフラーを巻き付けて、ついでに耳あてを着けさせる。
『グローリィが、寒くなる』
「大丈夫ですよ、コートが温かいし。」
首元が寒いけれど、少し縮まっていればね。
「さて、早く行きましょうか、せっかくのクリスマスです。」
『グローリィ』
「はい?」
手を引いて、彼は着いてくるけれど怪訝な顔をしていた。
『クリスマス、とは、なんだ?』
「……?」
もしかして、クリスマスも知らなかったのだろうか。
『皆が何かを祝っている。でも楽しそうにして、祝っているものを知らない…』
いつも何かを聞く時に申し訳なさそうにする彼だが、今までいた境遇を考えれば無知が多いのは仕方ないことだし、寧ろ彼に何か教えてあげられるのは嬉しいと思う。
人のために動くのが大嫌いな私がそう思ってしまうような純粋さが、このアサシンにはある。
「クリスマスは、神と通じた偉大な人の誕生日をなのですよ。」
『他人の誕生日、なのか…』
「ええ、人々は皆その人の誕生日を祝い祈り、その人を通して神にも祈るのですよ」
『なら…』
ジノは少し唇を引き締めた。
彼なりの苦笑い。
『俺には必要ないな…』
ああ、またちょっと教え方を失敗したかもしれない。
私は引き腰になったジノの手を強く引いて更に歩き出す。
「今頃教会は人で溢れて昼夜問わずミサが行われています。」
今日は絶対に捕まりたくなかったから、私にしては珍しくそれはもう本当に珍しく正攻法で、ここ一週間友人達のミサの代理を引き受けて代わりとして彼等に今日の私の担当を分割して引き受けてもらったのだ。
だから今日は私は教会へ行くつもりはない。
「でも私は今日、教会に行かないし、ほら、町にも祈る人なんていないでしょう?」
周りは楽しそうに歩き行く家族や友人や恋人達。
いつものように冒険者の集まりも掃けている。
『何故』
「可哀相なことにクリスマスでのミサは人々には二の次にされているからですよ。」
『何故』
「いつの間にかクリスマスは、大事な人と過ごす、というのが習慣になったからです。」
少し考えて、そしてそれからジノは目を丸くして私を見た。
「皆が幸せそうなのは、きっと互いに大事な人だ、って確認しあっているからでしょうね。」
『………。』
私の言葉に、今度は問いはこなかった。
返されたのは沈黙と戸惑い。
「どうしました?」
何に彼が戸惑っているのか、そんなのは分かっているけれど。
焦らして聞き出す方が面白い。
『………俺で、いいのか。』
長い沈黙の末に帰って来たのは、また問い。
私はにっこり笑う。
そして繋いでいた彼の手に指を絡めて強く握りしめる。
これが、言葉よりも伝わる返事になればいい。
「…うん、大切だ、って分かればいいんですよね。形式とか、そんな特別なことも要らない、かな。」
『…?』
少し、クリスマスだからって硬くなっていた自分に気付いた。
ジノと過ごして、もっと近付きたいなんて欲張っていたから。
「とりあえず、何かお揃いのものが欲しいな」
『………。』
「そのまえにやっぱり私、首元が寒いから新しいマフラーを買おう。ああ、ジノにももっと綺麗な色のを。」
『………。』
「ついでにコートも買いましょうか。街中まで狩り用のマントだと少し歩きづらいですしね。」
『………。』
ジノから、言葉は帰って来ない。
けれど、私が何か言う度に賛同の代わりに僅かに力が篭る手が愛しい。
振り返れば、顔が赤い。
これは寒さばかりじゃない、と勝手に思うことにする。
「夕飯は何が食べたいですか?」
『…………。』
「クリスマスの定番というと、七面鳥とケーキですが…」
そう言うと、ジノは足を止めてまでの意思表示。
思わず吹きだしそうになった。
確か、ルナのギルドの子にクッキーを貰って大層気に入ったらしいですしね。
甘い物、やっぱり好きなんだなあ。
今まではそんな自分を知る機会もなくて。
真っさらだったこの子がどうなって行くのか、本当に楽しみだと思う。
そして、変わり行く彼の隣には必ず、私がいたい。
「ケーキ、買って帰りましょうか。」
そう言って歩き出すと、ジノも歩調を速めて私の隣を歩き出す。
『ありがとう』
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