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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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寒い夜にほうり出され、茫然としていた。
「とりあえず、どこか宿とろうか。」
ルナティスがそう呟いて苦笑いした。
「お前は、それでいいのか?」
「いいけど、どうして?」
「…クリスマスだからってルティエとかに行きたがるかと」
「でもヒショウは寒いの嫌だろ?」
だったらそれでいいよ、と笑う。

…とりあえず、寒い。
「少し、歩くか。」
「宿は?」
「歩きながら考える。」
風はないし雪も降らない、しかし空気は肌を刺すように冷たい。

「マナのこの仕打ちはさ」
ルナティスがすぐ傍に寄ってきて俺の手を取りコートのポケットに突っ込む。
彼は手はいつも温かい、ポケットの中で尚更だった。
「気配りなのか嫌がらせなのかどっちかな」
「……さあな。」

夕飯の準備をしようとしたところで突然マナが俺にコートと荷物を押し付けて『どうせお前らクリスマスだからっていちゃつくんだろ、シェイディも嫌がるし一人身のうちらには目に痛いんだよ、ってわけで二人でどっか出掛けて朝帰りしてこい。』と笑顔で脅してきたのだ。
歩きながらマナに渡された荷物を確認してみる。

宿代や飲み代には十分な金。
俺がよく好んで飲んでいたブランデーの飲みかけ。
あと銘柄の合わない煙草。
適当に詰め込んだらしいが、この荷物を持っていたらなんだか物凄い駄目人間に思える。
「たまには、さ」
ルナティスが突然前を歩きだして、細道を行く。
「クリスマスらしくないことして二人過ごしてみるか。」
彼が悪戯っ子のように白い息を吐きながら笑う。


「……………。」
そうして忍び込んだのは、薄暗い部屋。
軋む木の床、ひび割れた窓硝子、しかしそれでも野外よりは寒さを防げる。
二人寄り添って、肩から掛けている薄い毛布はルナティスが持たされていた荷物だった。
「案外、気持ち良いなあ」
俺の肩に頭を乗せて、寄り添う所から伝わる体温にルナティスがそんなことを口走る。
俺も頬に触れる髪が、少し気持ち良いと思った。
不意に荷物の中のブランデーを思い出して、引き寄せた鞄から小瓶を取り出した。
「飲むか?」
「ん」
見せた瓶を、ルナティスが曖昧な返事のまま受け取り唇を寄せた。
彼は酒が飲めない訳ではないがブランデーを飲んでいるところをあまり見ない気がする。

「嫌いか?」
「……。」
聞いても彼は無言。
しかしブランデーを少し口に流し込み
笑いながらこちらを振り返り、顔を寄せろと手振りで指示する。
意図が分かり、乗り気ではないが彼のささやかな悪戯に付き合うことにした。

唇が重なり、少し開けた所から人肌に温まった液体が流れ込む。
ブランデーはロックが好きなんだがな…。
「勿体ないから、リサイクル。」ルナティスが笑いながら言うのを、同じく笑って熱を飲み下す。
「飲ませてやろうか」
そう言えば彼は笑ってこくこくと頷く。


思うに、俺達の関係が昔も今もこれからも変わらないのは、いつまで経っても子供っぽいからだろうか。
身体の関係だとかは抜きにして、精神的な面で。

いろいろあった、俺はいつもルナティスの負担で、時に傷つけた。
でもお前は絶対に笑って許すか忘れた振りをして無かったことにしてしまうんだ。
だから俺達はずっと笑っていられる。
時にはこんな風に口移しで酒を飲んで、エスカレートして口移しの喫煙なんかして

「ぐほ、ぐはっ!げはっ!の、喉が、鼻がっ」
「…お前、煙草吸ったことがないなら先に言えよ…」

笑いながら馬鹿して

特別なことなんか要らない。
同性でも結婚したいなんて要求するつもりもない。
ずっとこのまま変わらずにいればいい。


だから、たまには
イベントなんて無視でのんびり過ごすクリスマスでも、いいだろう?
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逃亡生活をする私達にはゆっくり湯に浸かるなんて機会は滅多にない。
普通の宿すら殆ど取らないのに、温泉地なんて人が多いところになんか行かないから温泉なんか以っての外だ。

けれどそれが人目に付かない秘湯なら別だ。


「……レイ?」
「………。」
「胸って、揉むとおっきくなるらしいわよ。」
「なにっ!」

揉んでいたというより、いかにも煩わしそうに胸を潰していただけなのだが、レイはぎょっとして自分の胸の膨らみから手をどけた。
顔は中性的、声も高めで、身体は造形が整った痩身。
そんな曖昧だが普段は男以外の何者にもにも見えないレイ。しかし服を脱ぎきつく結んでいた髪を頭上に緩く結いあげればどこから見ても湯煙の美女だ。
だが彼女は身体の女性である部分がきにくわないらしく、湯に漬かりながら自分の身体を睨みつけていた。

「せっかく綺麗なのに」
「…綺麗というのは嬉しいが、女である必要はない。」
「性転換手術でもしちゃえば?」
「副作用として運動機能に支障が出るらしい。」

つまり、試みたことがあるのか。

「それに、本当に男になったらそれこそシェイディに触れさせて貰えなくなる。」
「…それもそうね。」

貞操の危機、100%だものね。

シンリァがそれでも面白そうなのにとか不埒なことを考えながら、苦笑いを返す。

「かわいそうなレイ…」
「ん?」

シンリァの呟きは余りに小さく、レイの耳を掠めただけ。
怪訝な顔するレイを曖昧にかわしながら、シンリァは先に湯を上がっていく。


「…別に女でも、いいんだがな…」

ただ気に食わないのは、シェイディと違うこと。
成長期を終え、声変わりしたシェイディとは当然ながら随分身体が変わってしまった。

弟は自然と男として成長していくのに、自分は女で有る限り彼と同じ成長はできない。
男のように振る舞っても限界がある、いつかはあらゆる面でシェイディには追いつけなくなる日が来る。
それが嫌なのだ。

まあ、幸い彼はそんなに身長が延びなかったが。

「………。」

ふと、溜息。
そして苦笑い。
いつまでもシェイディに囚われないと彼に誓ったのに。
シェイディはいつか善い女性と…きっとマナと結婚して、家庭を持って父になって、自分とは違う所へいくんだ。
それを、自分が捕えてはいけないと分かっているのに。

身体の造りでさえ、彼から離れるのがこんなにも不満だ。


「ん?」

不意に背後で気配、そして水音。
湯煙の向こうから来る無防備な人間は、こちらに気付くと凝視して、固まった。

「ね、姉さっ…すまない!」

いたのはシェイディで、自分がまだ温泉に浸かっているとは知らずに来てしまったらしい。
彼は顔を真っ赤にして、慌ててUターンして戻っていく。

「こら」
「う、うあっ」

岩場に乗り上げたシェイディに飛び掛かり、バランスを崩して倒れ込んでくる彼を抱えたまま湯に戻った。

「一回入ったのにすぐ出たら湯冷めするぞ。」
「っ、っ、わかった!は、放してくれ!」

彼の背にはさぞ生々しくこちらの胸の感触が伝わっていることだろう。
耳まで真っ赤な理由は湯の熱さだけではあるまい。
こう弟を翻弄できるならこの身体も悪くない、なんて単純な発想をしながらレイは笑った。
同時に最愛の人を腕の中に(しかも裸で)閉じ込められる幸福を噛み締めながら。

「…ね、姉さん、頼むから…胸……」
「ん?興奮したか?」

そんな意地の悪い事を言って、彼の股間に手を延ばした
のは、流石にやり過ぎたらしい。



「…ちょっ、レイ、どうしたのその頬。」
「何かのギャグか?」

風呂から上がってきたレイの頬には、くっきり手形の赤い鬱血跡。

「……はは、ちょっとね…。」
「……。」
口に含んだ煙草から煙を吸い込み、喉の奥に通してから吐き出す。
すぼめた唇から吹き出る白煙が宙に散り消えていくのを無心で眺めていた。

今日のパーティーはなかなかバランスがいい。筈だった。

支援は半分殴りだがレベルはそこそこなので不足はないだろう。
自分は速度増加、あと時々のヒールがあればいいのだから。
アサシンの自分がしばらく敵をせき止め、ウィザードが一掃、理想的なパーティーであった。筈なのだ。

「おい、ヒショウ相当怒ってるぞ…煙草、苛々してる時しか吸わないもん。」
「ルナティス、謝れよ!」
「ウォルスが謝れよ!ふざけて僕にフロストダイバーとかかましてただろ!」
「君が支援をかまけて前線に飛び出してはヒショウにセクハラしてたからだろ!」
「それが原因じゃありませんー!だってヒショウがキレたのはウォルスが僕に対抗してヒショウにキスした時だもん!」
「君だってその前にキスしてずっと抱き着いて」

バキンッ

俺の手の中でレッドジェムストーンが砕ける音を耳にして、二人はやっと静まり返った。
砕けた魔法石は勿体ないのでそのまま自分の武器に毒属性でも付与しておく。
まあここのゴーレムどもにはあまり有効ではないが。

「二人共」
声をかけると子兎の如くビクッと震えあがる二人、いやむしろ二匹。
座っていた岩から飛び降り、煙草の火を押し付け揉み消し、適当に鞄に放り込んだ。

「SPは」
「「…回復してます」」
二人は息の合った声で返答してくる。
先程のふざけあいで二人のSPは尽きかけていたから、回復休憩兼、良い反省時間にはなっただろう。

「じゃあ行くか」
目も合わせない俺に、それでも機嫌が治ったと喜々として二人はついてくる。
本当は全く以って機嫌が良くなどなっていないのだが、カタールの腹で一発殴り飛ばして尚怒りをぶつけようとする程、俺は癇癪持ちではないというだけだ。



「はあああっ!僕のヒショウへの愛よーっ天使を呼べーっ!マグニッフィカート!!!」
「なんのー!降り注げ僕のヒショウとルナティスの仲の破滅を願う気持ちー!!ロードオブバーミリオンー!!!!」
「大魔法はずるいぞーっ!!」
「煩い!祝福を呼べないウィザードなら破滅を呼ぶのみだー!!!」

………二人共、互いの狩りでの役割を怠らなくはなったが………


一々叫びがうざったい。

ひそかに自分の名前が周りに知られないように冒険者証を懐にしまい込んだ。
WISだとかパーティーが使えなくなるし他にも機能停止するが、どうせウォルスがいるから公平は組んでいないし。

にしても、この二人いつの間にこんな風に争うようになったのか…。
狩りよりこの言い争いを楽しんでいるのではなかろうか。
ルナティスの俺への気持ちはとっくに既知だがウォルスのは…深い友情の範囲だろう、そう思いたい。

さっきのキスはただの悪ノリだ。
そうに違いない。

「やるなウォルス…ちょっと認めてやるぜ」
「じゃあ認めるならヒショウの一人占めをやめろよ」
「煩いな!そこは譲らんっ!時々ヒショウを二人で攻めて3Pなんて妄想しちゃったこともないでもないけど譲らねえ!」
「なっ!僕はそんなふしだらな事は考えていないぞ!健全なお付き合いしか眼中にない!」
「そんなこと言って~顔が赤いぞこのムッツリ☆」
「誰がムッツリだああああああ!!!」


…………駄目かもしれない。
会話がなんだかただの友情の範囲ではない気がする。
鈍い自覚のある俺だがルナティスとそういう関係になってから、段々鼻が効くようにはなってきたからこの会話をスルー出来る程鈍くはない。


まさか…
本当に久しぶりの幼なじみ再会をして早々に三角関係か…?


………とりあえずこんな時は…

逃げて聞かなかったふりだ



「あれっ、ヒショウがいないっ」「なに!パーティーも壊れてあるぞ?!」
「ちょっ、ヒショウー!また怒った?!」
「なっ、何故だ…!?」

【ほんとう】はいつまでも【ほんとう】であるとはかぎらない
何かがゆがんで
【うそ】になっちゃうこともある

【ほんとう】になれるのは
【約束】なんて【理性】の産物じゃなくて
【欲】という【本能】だけ


「僕のこと、好き?」
「またか…」
「愛してる?」
「…何度も言わせるな。」
「なあ、ヒショウ…」

「…愛してる。」


その言葉に、僕は笑うけど


「僕も。」


Me too. なんて返すけど
おまえのは、【理性】なんだよね僕のは【本能】
根本的にちがうんだよ ね

でも
【うそ】でもいいから
【うそ】になってしまうものでもいいから
ちょうだい


恋なんて言葉はすぐに【うそ】に
愛してるなんて言葉もいつか【廃棄物】に

僕だってヒトだし
僕も【うそ】になってしまうかもしれない


いや
それはない

僕はわかってる
もっと深いところで


僕のせかいにはおまえしかいない
おまえが死んだときが
僕が死ぬとき

僕が死ぬときは
おまえを殺すとき


体裁なくなって
おまえが【うそ】で受け入れれば受け入れるほど
僕はその【うそ】を信じてしまって
僕の【理性】は剥がれ落ちて


一緒じゃないと嫌だ


【うそ】でいいから
【うそ】になる感情でいいから


受け入れて

ルナティスはしばらくギルドで借りている宿舎から姿を消していた。
そんな彼が帰ってきたのは三日目の夕方。

今にも倒れそうにふらふらして目の下にクマを作って、いつもは鮮やかなエメラルドグリーンの瞳もブロンドもくすんで、髪はもう掻きむしって固まったようにボサボサだ。

「ま、またグローリィにコキ使われまくったんか。」
「いや、教会からも給料出してくれて…かなり貰ったから頑張った。」
マナの問い掛けに答えながら、部屋に戻るのもけだるいとばかりに客間のソファにどっかり腰掛けた。

「……ん…」
今にも眠り込んでしまいそうに瞼を下ろしかけていたところに、甘い香りが花をくすぐった。
瞼をまた上げて目の前を見ると、白い丸い冷や菓子と、うっすら湯気を立ち上らせる紅茶。

「アイスティーにするか?」
いつの間にかテーブル脇にいたヒショウが顔を覗き込んできながらそう聞いてくる。
アサシン装束は脱いで黒いタイトなアンダーを着ている。
首にフィットする襟に長袖で見た目は着苦しそうだが肩や肘、首後ろなど間接は開いていて動きやすいらしい。

その服や髪の黒の中に浮かび上がる衣服のあきから見える肌や顔の白さがなんだか際立つ。


あ、やば。
自分、飢えてる。


そんな短調に自分の今の状態を自覚して、視線をさ迷わせた。
殆ど露出のない服なのに、色っぽいなんて感じて喉の奥が熱くなった。

「アイスミルクティー、がいい。」
遠慮がちに注文すると、ヒショウは返事もなく氷の入ったグラスに先ほどの紅茶を移し替え、ミルクを注ぎ込む。

もう注文や要望はないか、と無言で目で聞いてくる。
ルナティスが何も答えないので、ないと判断して彼はそこから立ち去ろうとした。

視界から彼が消えるのが寂しくて、思わず呼び止めた。

「口移しして?」
「殴るぞ」
間髪置かずに怒られた。

「じゃ、あーんして?」
「グーと平手どっちがいい。」
これも駄目か。

「じゃあ膝枕ぁー」
「首絞めが好みか?」
ことごとく嫌がられて寂しくなりながらミルクティーに手をのばす。


氷がたくさん入ってよく冷えた液体が喉を潤す。
甘いのが苦手な彼が作るものしてはいつもより格段に甘くなっていたが、疲れた身体に染み渡る。

つれないけど、やっぱりよく気遣ってくれる。
口元に笑みを浮かべて、肩の力を抜いた。




「……ん」
しばらくソファでミルクティーを飲んで…菓子も食べ終わったところで寝てしまったらしい。


不意に、足元に違和感があって、身体を強張らせた。
下を見て、更に強張った。


ヒショウがいた。ルナティスが放り出した足の付け根あたりを枕にして。
そんなに長くもないソファに横になって、ひじ掛けに腿を乗せて足をソファの外に出して。
寝心地なんか良くないだろうに、すっかりと深い眠りに落ちている。

(膝枕とは言ったけど…)
苦笑いしながら少しでも彼の寝心地がよくなるように、でも自分の足が痺れないように、彼の顔が真上から見下ろせるように、少し身体をずらした。



実に穏やかな寝息をたてている。
外はもう夜になりかけで、夕飯時だ。
食事用テーブルを見ると、今日の夕飯係だったヒショウが作った料理が既に並んでいる。

もう少ししたら、今は各部屋にいるらしい皆が降りてくるだろう。
そうしたらきっとヒショウは何事もなかったように起きだしてまたルナティスを突っぱねるに違いない。

(ま、いっか。)
やはり男としては膝枕するよりされたいが、これはこれで悪くない。
少しくせっ毛だが柔らかい黒髪を指先で撫で、片手を彼の胸辺りに置いて、もう一眠りすることにした。
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