*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
*小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。
*かなりぶつ切りです。
*携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)
*携帯にも対応しています。
*コメントでの感想なども歓迎です。
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題目は
「シェイディお帰りなさーい!」
ルナティスが声高々に言って、透明な水が入ったグラスを掲げた。
否、水にあらず酒である。
「おかー…え、かんぱー…え、どっち?!」
通常乾杯というところでお帰りなさいとか言われて、グラスやジョッキを掲げていた一同は混乱した。
だが始まる前から実に賑やかだ。
インビシブルのメンバーに加えゴーストの面々もやってきて、テーブルでは狭苦しいからとわざわざ天津にきて座敷を借り切ったのだ。
「じゃー、私がー代表してシェイディを祝うー!」
酒に潰れないがすぐにテンションが上がるマナが、赤い顔でシェイディの前にスライディングしてきた。
突然滑り込まれて彼が驚くのは当然だが、更に驚くべきことに彼女の手にあったグラスから酒が零れていないことだ。
「いや、マナさんの祝いは怖いので分割払いで…」
「生ぬるーいこと言うんじゃ」
ない、とまで言う前に、グラスの酒を一気飲みで煽り
シェイディを押し倒しながら無理矢理にキスをした。
途端に回りから黄色い歓声があがる。
が。
ぶーっ!!!!
マナとシェイディの顔の間で水飛沫が上がった。
「ゲホッ、ゲホッ…シェイ、ディ…てめえ、よりによって吹きやがっ…」
「ゲホッ…マ、マナさんがいきなり、んなことするから悪…しかも凄い大量に流し込み…ゲホッゲホッ」
色気も何も無くなってしまった二人を、哀れむような視線が包む。
「もー二人共だめだめちゃんだなあ。僕が見本を見せてあげよう。」
笑いながらそう言うのはルナティスで
彼がそう言うということは、相手は当然…。
その騒ぎを見ていない興味もないヒショウだったが、身の危険を感じてレイヴァと話すのをやめて振り返った。
案の定ルナティスが酒を口に含んで近付いてきていた。
「っ、ハイディ…」
「んんふ!!!(ルアフ)」
「なんでそれで発動…っあ」
逃げ遅れて押し倒された。
すぐに暴れ逃げようとしたが
「っ!?」
よりによって胡座をかいていたレイヴァの腿に、まるでひざ枕のように後頭部を当てる形になってしまった。
レイヴァがいるから下手に暴れられない。
「ん゛ぐ!」
男2人、下手をすると3人で絡み合うような図になっても、テンションが上がっているせいで皆喜んでいる。
ルナティスが悪乗りして腰をヒショウの間に挟み込み、押し付けている。
抵抗しようとする手を頭上で押さえつけ、片手で顔を固定させ、口付けも深く
「…っん、ん…はっ…」
息をとめられ、苦しげだが
舌を絡めとられる熱に浮され、条件反射もあって微かに喘ぎ声が漏れた。
その瞬間、部屋が静まり反った…。
「ッハアアアアアア!!!!!!!!
消え去れえええええ!!!!!!!!」
「ぎゃあああああああ!!!!」
静寂で我に返り、羞恥で暴走したヒショウがカタールを抜き取ってルナティスに襲い掛かった。
だが誰もルナティスを助けようとしない。
「…俺の前から消え去れホモがー!!!!」
ヒショウに続きシェイディも気絶どころか死に至りそうなハンマーを掲げて参戦した。
彼は道徳からズレた恋愛等が受け入れがたいたちなのだ。
楽しい宴会は、それからしばらく3人の争う音だけだった。
「…ちょっとヒショウが…てのは想像できなかったんだが…」
「案外、大丈夫なものね…男の喘ぎ声。」
レイとシンリァが漏らした言葉に、誰か反応せずとも微かに頷いた。
―――――――――
結果。
レイヴァが1番可哀相
「シェイディお帰りなさーい!」
ルナティスが声高々に言って、透明な水が入ったグラスを掲げた。
否、水にあらず酒である。
「おかー…え、かんぱー…え、どっち?!」
通常乾杯というところでお帰りなさいとか言われて、グラスやジョッキを掲げていた一同は混乱した。
だが始まる前から実に賑やかだ。
インビシブルのメンバーに加えゴーストの面々もやってきて、テーブルでは狭苦しいからとわざわざ天津にきて座敷を借り切ったのだ。
「じゃー、私がー代表してシェイディを祝うー!」
酒に潰れないがすぐにテンションが上がるマナが、赤い顔でシェイディの前にスライディングしてきた。
突然滑り込まれて彼が驚くのは当然だが、更に驚くべきことに彼女の手にあったグラスから酒が零れていないことだ。
「いや、マナさんの祝いは怖いので分割払いで…」
「生ぬるーいこと言うんじゃ」
ない、とまで言う前に、グラスの酒を一気飲みで煽り
シェイディを押し倒しながら無理矢理にキスをした。
途端に回りから黄色い歓声があがる。
が。
ぶーっ!!!!
マナとシェイディの顔の間で水飛沫が上がった。
「ゲホッ、ゲホッ…シェイ、ディ…てめえ、よりによって吹きやがっ…」
「ゲホッ…マ、マナさんがいきなり、んなことするから悪…しかも凄い大量に流し込み…ゲホッゲホッ」
色気も何も無くなってしまった二人を、哀れむような視線が包む。
「もー二人共だめだめちゃんだなあ。僕が見本を見せてあげよう。」
笑いながらそう言うのはルナティスで
彼がそう言うということは、相手は当然…。
その騒ぎを見ていない興味もないヒショウだったが、身の危険を感じてレイヴァと話すのをやめて振り返った。
案の定ルナティスが酒を口に含んで近付いてきていた。
「っ、ハイディ…」
「んんふ!!!(ルアフ)」
「なんでそれで発動…っあ」
逃げ遅れて押し倒された。
すぐに暴れ逃げようとしたが
「っ!?」
よりによって胡座をかいていたレイヴァの腿に、まるでひざ枕のように後頭部を当てる形になってしまった。
レイヴァがいるから下手に暴れられない。
「ん゛ぐ!」
男2人、下手をすると3人で絡み合うような図になっても、テンションが上がっているせいで皆喜んでいる。
ルナティスが悪乗りして腰をヒショウの間に挟み込み、押し付けている。
抵抗しようとする手を頭上で押さえつけ、片手で顔を固定させ、口付けも深く
「…っん、ん…はっ…」
息をとめられ、苦しげだが
舌を絡めとられる熱に浮され、条件反射もあって微かに喘ぎ声が漏れた。
その瞬間、部屋が静まり反った…。
「ッハアアアアアア!!!!!!!!
消え去れえええええ!!!!!!!!」
「ぎゃあああああああ!!!!」
静寂で我に返り、羞恥で暴走したヒショウがカタールを抜き取ってルナティスに襲い掛かった。
だが誰もルナティスを助けようとしない。
「…俺の前から消え去れホモがー!!!!」
ヒショウに続きシェイディも気絶どころか死に至りそうなハンマーを掲げて参戦した。
彼は道徳からズレた恋愛等が受け入れがたいたちなのだ。
楽しい宴会は、それからしばらく3人の争う音だけだった。
「…ちょっとヒショウが…てのは想像できなかったんだが…」
「案外、大丈夫なものね…男の喘ぎ声。」
レイとシンリァが漏らした言葉に、誰か反応せずとも微かに頷いた。
―――――――――
結果。
レイヴァが1番可哀相
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「はい、バレンタインチョコですw」
そういいながらメルフィリアが夕食の席に色とりどりのチョコが盛られた皿を置く。
趣味がお菓子作りであるメルフィリアが夕食担当の時は大抵食後に軽くお菓子が振舞われる。
バレンタインの夜にも彼女のチョコは毎年恒例なので、みんなちゃんと夕飯は腹八分目にしていた。
「ヒショウさんはチョコ作らなかったんですか?」
メルフィリアのチョコを満足げに平らげていたルナティスを見て疑問に思い、その恋人に率直に質問を投げかけた。
「…チョコは苦手だ。」
ヒショウはルナティスと恋人としっかり認識されていることを恥じているのか、少し顔を赤くしている。
彼は甘いものが苦手というが、料理は好きな部類だったはずだ。
「でも作るだけなら大丈夫なのでは?」
「味を見ずに初めて作るものを美味く作れるか?」
問い返されればなるほど、と納得してしまう。
「不味いもんでも、乙女ちっくに「愛情はたっぷり込めたから」とか言えばいいんじゃねーの?」
そんないい加減な発言をするマナだが、なぜかルナティスと腕相撲をしている。
本人を目の前にしているのだからまじめな発言ではあるまい。
「…きもい。」
「…確かにそんなヒショウはちょっと怖いかもしれない。」
自分のことなのにきもいときっぱりいうヒショウと、それに納得しているルナティスだ。
「じゃあ裸エプロンでもしとけば?」
マナのその発言に、一同は吐き気を催したようだ。
「それはいいかもしれない…!」
ただし、ルナティスは除く。
だが言い終わった瞬間に、ヒショウの靴がルナティスの頭を壁に押し付けていた。
「お前の感性はさっぱりわからん。」
「…恋人を足蹴にできるお前の感性もわからねーよ。」
ヒショウに隠れて、マナの呟きにその場の誰もが賛同した。
バレンタインでも人前で恋人らしさの欠片も出せない二人に、甘い時間はまだ訪れそうになかった。
そういいながらメルフィリアが夕食の席に色とりどりのチョコが盛られた皿を置く。
趣味がお菓子作りであるメルフィリアが夕食担当の時は大抵食後に軽くお菓子が振舞われる。
バレンタインの夜にも彼女のチョコは毎年恒例なので、みんなちゃんと夕飯は腹八分目にしていた。
「ヒショウさんはチョコ作らなかったんですか?」
メルフィリアのチョコを満足げに平らげていたルナティスを見て疑問に思い、その恋人に率直に質問を投げかけた。
「…チョコは苦手だ。」
ヒショウはルナティスと恋人としっかり認識されていることを恥じているのか、少し顔を赤くしている。
彼は甘いものが苦手というが、料理は好きな部類だったはずだ。
「でも作るだけなら大丈夫なのでは?」
「味を見ずに初めて作るものを美味く作れるか?」
問い返されればなるほど、と納得してしまう。
「不味いもんでも、乙女ちっくに「愛情はたっぷり込めたから」とか言えばいいんじゃねーの?」
そんないい加減な発言をするマナだが、なぜかルナティスと腕相撲をしている。
本人を目の前にしているのだからまじめな発言ではあるまい。
「…きもい。」
「…確かにそんなヒショウはちょっと怖いかもしれない。」
自分のことなのにきもいときっぱりいうヒショウと、それに納得しているルナティスだ。
「じゃあ裸エプロンでもしとけば?」
マナのその発言に、一同は吐き気を催したようだ。
「それはいいかもしれない…!」
ただし、ルナティスは除く。
だが言い終わった瞬間に、ヒショウの靴がルナティスの頭を壁に押し付けていた。
「お前の感性はさっぱりわからん。」
「…恋人を足蹴にできるお前の感性もわからねーよ。」
ヒショウに隠れて、マナの呟きにその場の誰もが賛同した。
バレンタインでも人前で恋人らしさの欠片も出せない二人に、甘い時間はまだ訪れそうになかった。
ルナ「ヒショウ~……」
ヒショ「Σ …どうした、号泣して…。」
ルナ「怖い夢みた……」
ヒショ「…そうか。(子供かよ…)」
ルナ「…ヒショウが結婚しちゃうんだ…」
ヒショ「…そうか。(もうしただろうが。)」
ルナ「よりによってレイヴァと」
ヒショ「それはありえないな。(レイヴァにそんな目で見られたらこのギルドから逃げるぞ、俺は)」
ルナ「しかも古墳の上で」
ヒショ「……。」
ルナ「参列者はもちろん埴輪で」
ヒショ「……。」
ルナ「でも形式はウンバラなの」
ヒショ「それは非常に興味があるな。(やりたくはないが見たい。)」
ルナ「(え、僕らの結婚式はプロンテラ式のつもりだったんだけど、そっちの方がいいのか!?)」
ヒショ「Σ …どうした、号泣して…。」
ルナ「怖い夢みた……」
ヒショ「…そうか。(子供かよ…)」
ルナ「…ヒショウが結婚しちゃうんだ…」
ヒショ「…そうか。(もうしただろうが。)」
ルナ「よりによってレイヴァと」
ヒショ「それはありえないな。(レイヴァにそんな目で見られたらこのギルドから逃げるぞ、俺は)」
ルナ「しかも古墳の上で」
ヒショ「……。」
ルナ「参列者はもちろん埴輪で」
ヒショ「……。」
ルナ「でも形式はウンバラなの」
ヒショ「それは非常に興味があるな。(やりたくはないが見たい。)」
ルナ「(え、僕らの結婚式はプロンテラ式のつもりだったんだけど、そっちの方がいいのか!?)」
ただヒショウに先頭を行かせるのではつまらない、と一つの部屋を一人が調べることにした。
そして見付けた人にはその人のご飯を皆でおごってやるとかなんとか決まった。
「セイヤー、そっち見つかったー?」
「見付かりません、というより怖くてなかなか探せません!」
今は向かい合わせに並ぶ部屋をセイヤとルナティスが探しているようだ。
ちなみにどちらの部屋も、踏み込む前にヒショウが一回りして探知済みである。
「ところでヒショウさん、取り付かれたこと、あるんですよね?」
二人の捜索を待つ間、メルフィリアが彼の隣に並び、小さく聞く。
霊の話をすると寄ってくるというのはよく言われる、それを気にしているのだろう。
小声にしたところで変わらぬだろうが。
「まあ、頻繁に。」
「ちょっとじゃないんですのね…。その取り憑かれるとどうなるのです?」
「…気分が悪くなったり感情が乱れるらしい。」
「らしい、って…ヒショウさんも取り憑かれた経験がお有りなんですよね?」
「俺は特異体質だ。」
ヒショウは何故か視線を宙に漂わせて呟くように回答する。
「暗殺者に不向きとされる体質で“傀儡”という。
憑かれるとそれの記憶や意識も入り込んで、完全にその人格になる。
昔、小さいアサシンギルドに“傀儡”のアサシンがいてその女が殺した奴らが彼女を使ってアサシンギルドを壊滅に追い込んだらしい。以来、傀儡は冒険者のアサシンにはなれても暗殺者にはなれない決まりだ。」そう言えば、ヒショウは昔アサシンギルドから暗殺者になれと命じられたらしい。
孤児上がりの冒険者には、どの職でもそういった裏の仕事を押し付けられることが今でもある。
一度命じられれば断ったりそこから抜けるのは難しい。
だがヒショウはたまたま“傀儡”だったからすぐに免除されたのだろう。そう容易に察することができた。
「…で、その“傀儡”って、かなり怖いのでは。」
「俺自信は意識がなくなる、怖くもなんともない。」
メルフィリアはしばし言葉を失い硬直した。
この男、繊細に見えてかなり図太いのでは。
それに怖がらないのは霊を信じていないとか慣れているとかではない、もう憑かれてもいいやといういい加減な認識のせいだ。
ルナティスとマナは、ヒショウがいればレーダー代わりになって安全とか吐かしていたが、実際もし霊的なものがいたらヒショウを介して直接危害を加えてこれるということだ。
「マナさん!!ふざけるなですわ!ヒショウさんがいたらもっとこの肝試し危険になりますわよ!」
普段はお嬢様口調を抑えているメルフィリアだが、肝試しに参加してからかなり動揺しているらしい。
「大丈夫大丈夫。幽霊ってのは見えないし手出し出来ないから怖いんだ。ヒショウに入っちまえばヒショウをボコればいいから。」
マナは実に爽やかに、力強く親指を立てた。
メルフィリアはヒショウにそれでいいのかと聞こうとしたが、やめた。
なんとなく答えは解る気がする。
『まあ、どうせその最中は意識ないから。』
そして見付けた人にはその人のご飯を皆でおごってやるとかなんとか決まった。
「セイヤー、そっち見つかったー?」
「見付かりません、というより怖くてなかなか探せません!」
今は向かい合わせに並ぶ部屋をセイヤとルナティスが探しているようだ。
ちなみにどちらの部屋も、踏み込む前にヒショウが一回りして探知済みである。
「ところでヒショウさん、取り付かれたこと、あるんですよね?」
二人の捜索を待つ間、メルフィリアが彼の隣に並び、小さく聞く。
霊の話をすると寄ってくるというのはよく言われる、それを気にしているのだろう。
小声にしたところで変わらぬだろうが。
「まあ、頻繁に。」
「ちょっとじゃないんですのね…。その取り憑かれるとどうなるのです?」
「…気分が悪くなったり感情が乱れるらしい。」
「らしい、って…ヒショウさんも取り憑かれた経験がお有りなんですよね?」
「俺は特異体質だ。」
ヒショウは何故か視線を宙に漂わせて呟くように回答する。
「暗殺者に不向きとされる体質で“傀儡”という。
憑かれるとそれの記憶や意識も入り込んで、完全にその人格になる。
昔、小さいアサシンギルドに“傀儡”のアサシンがいてその女が殺した奴らが彼女を使ってアサシンギルドを壊滅に追い込んだらしい。以来、傀儡は冒険者のアサシンにはなれても暗殺者にはなれない決まりだ。」そう言えば、ヒショウは昔アサシンギルドから暗殺者になれと命じられたらしい。
孤児上がりの冒険者には、どの職でもそういった裏の仕事を押し付けられることが今でもある。
一度命じられれば断ったりそこから抜けるのは難しい。
だがヒショウはたまたま“傀儡”だったからすぐに免除されたのだろう。そう容易に察することができた。
「…で、その“傀儡”って、かなり怖いのでは。」
「俺自信は意識がなくなる、怖くもなんともない。」
メルフィリアはしばし言葉を失い硬直した。
この男、繊細に見えてかなり図太いのでは。
それに怖がらないのは霊を信じていないとか慣れているとかではない、もう憑かれてもいいやといういい加減な認識のせいだ。
ルナティスとマナは、ヒショウがいればレーダー代わりになって安全とか吐かしていたが、実際もし霊的なものがいたらヒショウを介して直接危害を加えてこれるということだ。
「マナさん!!ふざけるなですわ!ヒショウさんがいたらもっとこの肝試し危険になりますわよ!」
普段はお嬢様口調を抑えているメルフィリアだが、肝試しに参加してからかなり動揺しているらしい。
「大丈夫大丈夫。幽霊ってのは見えないし手出し出来ないから怖いんだ。ヒショウに入っちまえばヒショウをボコればいいから。」
マナは実に爽やかに、力強く親指を立てた。
メルフィリアはヒショウにそれでいいのかと聞こうとしたが、やめた。
なんとなく答えは解る気がする。
『まあ、どうせその最中は意識ないから。』
真っ暗な木造の屋敷を一同は進む。
ルナティスとセイヤが唱えるルアフの明かりが頭上から辺りを照らしているが、それでも通路の先や隅々までは照らせなくて、薄暗い奥にある暗闇から何かが出てくるのでは、と何も見えないより恐怖心を煽られる。
だがそれでも、意外にも一同の進む足は順調だ。
先頭を行くヒショウとルナティス、その後ろにいるマナがてくてく進んでいくからだ。
ウィンリーとレイヴァはこの手の恐怖に強いらしい。
メルフィリアとセイヤは酷く怯えているが、必死に着いていくので遅れはない。
「…皆さん、怖くないんですか?」
「も、もう少しゆっくり歩いて頂けません?」
震え上がっている二人をウィンリィが少し笑った。
「怖いもの置いてあるわけじゃないし、暗いだけじゃん。ちょっとビクビクしすぎだろ。」
「暗いだけで十分だよ…」
皆入る前は怖がっていたものの、ほとんどが入ってからはけろりとしているので、メンバーの声は比較的明るい。
「キャアアアッ!!」
突然、メルフィリアが悲鳴を上げて前を歩いていたマナに飛び付いた。
「あ、あのへんっ、女の人の顔があっ!」
震える彼女の様子に、セイヤとウィンリィまで怯えだしてしまった。
その方向へ、ヒショウが僅かに光る蛍石という発光石を掲げながらそちらへ歩いていった。
「……メルフィリア、ただの絵画だ。」
彼が照らしたのは可愛い女の子の肖像画。
薄暗いところで見るから不気味だが、日の下で見れば実にほほえましい絵画だろう。
「メル、お、脅かすなよっ…」
「だ、だって~」
涙ぐむ彼女に、マナが笑いながら頭を撫でてやった。「肝試しはこうじゃないとなー」
「ナイス、メル」
ルナティスは笑って彼女に向かって親指を起てた。
「う、うわっ!」
今度はウィンリィが声をあげた。
「そこに白いもやが」と言うが、またヒショウが確認すればただの壁のシミだった。
「アハハー、ウィンリィだって怖がりじゃないかー」
ルナティスが笑いながらそう言うと、ウィンリィは少しふて腐れた。
「ほらお前ら、根性ある二次職に育てよー。」
マナが笑いながらそんなことを言う。
ルナティスとマナには全く怯えた様子がなくて、怯えてばかりのメルフィリア達は彼らに感心していた。
「コホッ」
「「ひぎゃああああああああ!!!!!」」
突然、何かの小さな物音に二人はさっきとは打って変わり絶叫して泣き叫んだ。
「いやあああああ!!!??」
「うわあああああ!!!??」
「ぎゃあああ!!何何何イイイイ!!!」
それにつられて皆も叫びだし、その場が阿鼻叫喚となった。
「ちょ、なっ、ヒショウ、咳?ただの咳!?」
ルナティスが彼に詰め寄ると、彼はきょとんとして答えた。
「ああ、少し埃っぽくて。」
「脅かすなよっ!」
「そうだこの馬鹿!咳なんかすんな紛らわしい!」
メルフィリアとウィンリィの悲鳴は全くきにしなかったくせに、何故かルナティスとマナは過剰反応してヒショウの咳を責める。
「何だ、咳くらいで」
ヒショウの最もな反論に、マナが怒鳴った。
「お前がなんか行動するとシャレになんねーんだよ!自粛しろ!」
そう言って、またヒショウに前に進むように促した。
「ヒショウさんだとシャレにならない…って、ヒショウさんって霊感とかあるんですか?」
セイヤの質問に、彼は間髪置かずに「全然」と否定した。
「でもすぐにとり憑かれる癖がある。」
「……え。」
しばらく空気が固まった。
「つまり、ヒショウに何も異常がなけりゃここは安全ってことだ、なんかいたら真っ先にこいつが憑かれるから。」
笑いながらマナが説明する。
「まあ逆に、ヒショウに異常があったらここは危ないってことで、すぐに逃げようね!」
ルナティスが超にこやかな笑顔で言う。
「それって、攻略本見ながらゲームするのとおんなじようなものじゃないんですか…。」
「「先が分からないゲームは嫌い。」」
マナとルナティスの声がぴったり被った。
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