*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
*小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。
*かなりぶつ切りです。
*携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)
*携帯にも対応しています。
*コメントでの感想なども歓迎です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
黒い法衣の裾に沿って、犬が駆け回る。
正確には仔狼。
茶色い毛並みの塊は尻尾をちぎれんばかりに振り乱している。
あんなに息上がってるのに、まだ動き回るのかと無知なアサシンは関心していた。
「デザートウルフは嫌いですか?」
その仔狼とじゃれあっていたプリーストの方が疲れたらしく、遊ぶのをやめてアサシンに向き直る。
アサシンは小さく首を横に振った。
だが普段のこのデザートウルフに対する態度から『好き』という意味でないのは分かる。
『…獣にも優しいな。』
声を音にすることができない青年は、言葉をプリーストに冒険者証を通して通信した。
彼の言葉を補足するなら、「アンタは人を相手にする時だけでなく、獣を相手にするときも平等に優しいのだな」と言いたいようだ。
プリーストはそれに苦笑いで返した。
力を抜いたプリーストの背後に、その獣が飛びかかろうとしていた。
が、プリーストは半身を捻っただけで仔狼を平手でたたき落とした。
『っ!』
優しいなと口にしたそばからそれか。
「…ペットはただの獣じゃないですよ。」
慈愛の表情をして、聖職者は囁く。
「家族…と言ったら綺麗すぎますが」
ならアンタはさっき家族を平手でたたき落としたのかとツッコムところか。
「些細でも、自分の人生というか…生活に確実に関わっている存在ですし。深く関わった今、この子は私の大切な何かですから。」
彼の言うことは少し難しくてわかりにくい。
首をかしげていると、彼は何か思いついたように唇の端を上げた。
「そうだ。ジノにお願いが。」
彼の楽しそうな笑顔というのは、大体信用できない。
一人、痩身のアサシンと子デザートウルフが町を駆けている。
別に楽しそうでも大変そうでもない。
子デザートウルフはただひたすら駆けている。
アサシンは無表情でそれを追っている。
一見では何をしているか、誰も理解することはできない。
『…散歩って、これでいいのか?…まぁいいか。』
ただ青年は一人心の中で自問自答していた。
それでもやはり周りの一般人の驚いたような視線のせいで疑問はぬぐえず、また同じ自問自答を繰り返す。
『……。』
前を走る獣、それの名前を「グリード」と言うが、声をかけたくとも青年は声を発することはできない。
それに何よりグリードは後ろから追ってくるアサシンに懐いていない。
得体の知れない人間が追いかけてくるように思っているのかもしれない。
それでも走る様子に必死さはないのだから、後ろの人間を無視して自分の好きに走っているだけということを、アサシンはなんとなく感じ取り始めていた。
きっと、君にも何か分かるかもしれないよ。
あらゆる意味で信頼しているあのプリーストはそういった。
だからこうして散歩…とはいえぬ散歩をしているのだが。
ただ俊足とスタミナを鍛えているだけにしか思えなくなっていた。
「…うわ、うわ!!」
「?!」
しばらく走っていて息が切れてきた頃、前方で人の慌てふためく声がした。
視線の先にはごつい肉屋の店主が包丁を持ったまま店の前に立ち往生している。
グリードの進行方向はその真っ只中。
デザートウルフは当然肉食。
そういえばアサシン自身も小腹が空いてきた頃、目の前の獣も飢えていたのかも知れない。
「っ!!」
アサシンは半身をひねり、重心を下げて地面すれすれを流れるように高速移動した。
バックステップ、体に負担はかかるし後方移動しかできないのが難点だがそちらのほうが格段に早く移動できる。
肉屋と店主に背を向けて、アサシンの体が子デザートウルフの前に現れた。
「ギャンッ!!」
内心、息を呑んだ。
つい咄嗟に飛び掛ってきていたグリードを平手で突き飛ばしてしまった。
泣き声をあげてそれは石畳の床に転がった。
『……。』
一度転がった獣はすぐに起き上がってうめき声を上げ始める。
完全に敵視して警戒してしまっている。
『…ごめん。』
言ったところで特定の冒険者以外には聞こえない声。
こんなとき、どうすればいいのだろう。
獣に対して謝るとき、飼い主のプリーストならどうするだろう。
考えながら、アサシンは獣と少し距離をおいて前にしゃがみこんだ。
そして手を伸ばす。
『っ…』
牙が手の平と甲に食い込む。
噛み千切ろうという勢いで牙を刺したまま顔を動かして。
『……ごめん。』
生きてきて、謝ることなんて無かった。
職業柄、謝っても仕方ない、意味の無いことばかりしてきたから。
でもきっと、自分とは違って汚れていない人たちは、許しを請うだろう。
アサシンは抵抗しないまま、残った片手で獣の頭をなでようとした。
いっそう牙が食い込んで激痛がしたが、それでもかまれているほうの腕は動かさずに。
茶色い毛並みを撫でる。
『……ごめんなさい。』
ずっと撫でていた。
---続く(微妙な区切り)
正確には仔狼。
茶色い毛並みの塊は尻尾をちぎれんばかりに振り乱している。
あんなに息上がってるのに、まだ動き回るのかと無知なアサシンは関心していた。
「デザートウルフは嫌いですか?」
その仔狼とじゃれあっていたプリーストの方が疲れたらしく、遊ぶのをやめてアサシンに向き直る。
アサシンは小さく首を横に振った。
だが普段のこのデザートウルフに対する態度から『好き』という意味でないのは分かる。
『…獣にも優しいな。』
声を音にすることができない青年は、言葉をプリーストに冒険者証を通して通信した。
彼の言葉を補足するなら、「アンタは人を相手にする時だけでなく、獣を相手にするときも平等に優しいのだな」と言いたいようだ。
プリーストはそれに苦笑いで返した。
力を抜いたプリーストの背後に、その獣が飛びかかろうとしていた。
が、プリーストは半身を捻っただけで仔狼を平手でたたき落とした。
『っ!』
優しいなと口にしたそばからそれか。
「…ペットはただの獣じゃないですよ。」
慈愛の表情をして、聖職者は囁く。
「家族…と言ったら綺麗すぎますが」
ならアンタはさっき家族を平手でたたき落としたのかとツッコムところか。
「些細でも、自分の人生というか…生活に確実に関わっている存在ですし。深く関わった今、この子は私の大切な何かですから。」
彼の言うことは少し難しくてわかりにくい。
首をかしげていると、彼は何か思いついたように唇の端を上げた。
「そうだ。ジノにお願いが。」
彼の楽しそうな笑顔というのは、大体信用できない。
一人、痩身のアサシンと子デザートウルフが町を駆けている。
別に楽しそうでも大変そうでもない。
子デザートウルフはただひたすら駆けている。
アサシンは無表情でそれを追っている。
一見では何をしているか、誰も理解することはできない。
『…散歩って、これでいいのか?…まぁいいか。』
ただ青年は一人心の中で自問自答していた。
それでもやはり周りの一般人の驚いたような視線のせいで疑問はぬぐえず、また同じ自問自答を繰り返す。
『……。』
前を走る獣、それの名前を「グリード」と言うが、声をかけたくとも青年は声を発することはできない。
それに何よりグリードは後ろから追ってくるアサシンに懐いていない。
得体の知れない人間が追いかけてくるように思っているのかもしれない。
それでも走る様子に必死さはないのだから、後ろの人間を無視して自分の好きに走っているだけということを、アサシンはなんとなく感じ取り始めていた。
きっと、君にも何か分かるかもしれないよ。
あらゆる意味で信頼しているあのプリーストはそういった。
だからこうして散歩…とはいえぬ散歩をしているのだが。
ただ俊足とスタミナを鍛えているだけにしか思えなくなっていた。
「…うわ、うわ!!」
「?!」
しばらく走っていて息が切れてきた頃、前方で人の慌てふためく声がした。
視線の先にはごつい肉屋の店主が包丁を持ったまま店の前に立ち往生している。
グリードの進行方向はその真っ只中。
デザートウルフは当然肉食。
そういえばアサシン自身も小腹が空いてきた頃、目の前の獣も飢えていたのかも知れない。
「っ!!」
アサシンは半身をひねり、重心を下げて地面すれすれを流れるように高速移動した。
バックステップ、体に負担はかかるし後方移動しかできないのが難点だがそちらのほうが格段に早く移動できる。
肉屋と店主に背を向けて、アサシンの体が子デザートウルフの前に現れた。
「ギャンッ!!」
内心、息を呑んだ。
つい咄嗟に飛び掛ってきていたグリードを平手で突き飛ばしてしまった。
泣き声をあげてそれは石畳の床に転がった。
『……。』
一度転がった獣はすぐに起き上がってうめき声を上げ始める。
完全に敵視して警戒してしまっている。
『…ごめん。』
言ったところで特定の冒険者以外には聞こえない声。
こんなとき、どうすればいいのだろう。
獣に対して謝るとき、飼い主のプリーストならどうするだろう。
考えながら、アサシンは獣と少し距離をおいて前にしゃがみこんだ。
そして手を伸ばす。
『っ…』
牙が手の平と甲に食い込む。
噛み千切ろうという勢いで牙を刺したまま顔を動かして。
『……ごめん。』
生きてきて、謝ることなんて無かった。
職業柄、謝っても仕方ない、意味の無いことばかりしてきたから。
でもきっと、自分とは違って汚れていない人たちは、許しを請うだろう。
アサシンは抵抗しないまま、残った片手で獣の頭をなでようとした。
いっそう牙が食い込んで激痛がしたが、それでもかまれているほうの腕は動かさずに。
茶色い毛並みを撫でる。
『……ごめんなさい。』
ずっと撫でていた。
---続く(微妙な区切り)
PR
この記事にコメントする
カテゴリー
最新記事
アクセス解析