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何も代わり映えない風景が、彼を見た瞬間に凍り付き、そして崩れ去った気がした。




世界には私と、彼だけになった。もしくは、なればいいと思ったのかもしれない。
ある意味では見覚えがあり、ある意味ではない、クルセイダーだった。






別に彼を捜していた訳ではなかった。
望んだ訳でもなかった。


何故なら初めから知らなかったのだから。
知っていたら、どうしようもなく求めた筈だ。




私の半身。





本当に突然のことで頭が着いていかないが、確信があった。
それはあちらも同じようで…




さっきまでへらへらと浮かべた薄っぺらい笑みを削ぎ落とした。





「コンバンワ」

まるで人形に話し掛けるようにそんな気の抜けた挨拶をしてくる。
しかしその目は真剣だった。
その目に免じて無視はしないでおいてやろう。

「今は朝だ。」

そう言い捨てれば、彼はしばし目を丸くして、笑った。

「……なあ。」

今度の彼の笑みは、どこか辛辣だ。

「アンタの家、行っていい?」

ここは狩りを共する一時の仲間を募集し集まる場所。
とても場違いな誘いだった。

こちらはウィザード、狩りに使えないわけではない。
私を捉えておく理由が必要ならそれでいいだろうに。


「事には順序があるものだ。何処に初対面の不審者を迎え入れる馬鹿がいる。」
「ここにいる。」

彼は段々と驚きを落ち着けて、余裕を取り戻して笑う。
その表情は力強く、野性的な魅力があった。

私と同じ顔であるはずなのに。

「アンタの家が駄目なら、俺の家に。」
「……。」

彼でなければ、こんな馬鹿な申し出は断った。
この顔でなければ。

「ジュノーの酒は好きか?とびっきりのがある。
ああ、なんとかっつーアユタヤの料理もあったな。」

交渉にしては幼稚で
軟派にしては必死。

「…ジュノーの酒もアユタヤ料理も好みではない。」
「……。」
「それより美味いものがある。」
こんな下品な男の誘いに乗ってやるのは癪だが、私としてもこの男を今逃したくはない。
それは互いに同じ筈だ。

「…即席でよければ馳走してやりに行こうか。」


さっきまでどこかぴりぴりしていた空気が、一気に和らいだ、
全てはこの男の感情が空気ににじませていたものだ。

彼はニッと白い歯を見せて、子供っぽく笑った。


私と同じ顔をして。
違うといえば肌の色と、髪の長さ。
だがこんなにも彼の表情は自分と違う。
本質は同じ筈なのに。




「歓迎するよ、兄弟」




それは彼の着く聖職になぞらえた冗談か
それとも言葉通りの意味か



それは数時間後には明らかになることだろう。
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