*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)
*小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。
*かなりぶつ切りです。
*携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)
*携帯にも対応しています。
*コメントでの感想なども歓迎です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何も代わり映えない風景が、彼を見た瞬間に凍り付き、そして崩れ去った気がした。
世界には私と、彼だけになった。もしくは、なればいいと思ったのかもしれない。
ある意味では見覚えがあり、ある意味ではない、クルセイダーだった。
別に彼を捜していた訳ではなかった。
望んだ訳でもなかった。
何故なら初めから知らなかったのだから。
知っていたら、どうしようもなく求めた筈だ。
私の半身。
本当に突然のことで頭が着いていかないが、確信があった。
それはあちらも同じようで…
さっきまでへらへらと浮かべた薄っぺらい笑みを削ぎ落とした。
「コンバンワ」
まるで人形に話し掛けるようにそんな気の抜けた挨拶をしてくる。
しかしその目は真剣だった。
その目に免じて無視はしないでおいてやろう。
「今は朝だ。」
そう言い捨てれば、彼はしばし目を丸くして、笑った。
「……なあ。」
今度の彼の笑みは、どこか辛辣だ。
「アンタの家、行っていい?」
ここは狩りを共する一時の仲間を募集し集まる場所。
とても場違いな誘いだった。
こちらはウィザード、狩りに使えないわけではない。
私を捉えておく理由が必要ならそれでいいだろうに。
「事には順序があるものだ。何処に初対面の不審者を迎え入れる馬鹿がいる。」
「ここにいる。」
彼は段々と驚きを落ち着けて、余裕を取り戻して笑う。
その表情は力強く、野性的な魅力があった。
私と同じ顔であるはずなのに。
「アンタの家が駄目なら、俺の家に。」
「……。」
彼でなければ、こんな馬鹿な申し出は断った。
この顔でなければ。
「ジュノーの酒は好きか?とびっきりのがある。
ああ、なんとかっつーアユタヤの料理もあったな。」
交渉にしては幼稚で
軟派にしては必死。
「…ジュノーの酒もアユタヤ料理も好みではない。」
「……。」
「それより美味いものがある。」
こんな下品な男の誘いに乗ってやるのは癪だが、私としてもこの男を今逃したくはない。
それは互いに同じ筈だ。
「…即席でよければ馳走してやりに行こうか。」
さっきまでどこかぴりぴりしていた空気が、一気に和らいだ、
全てはこの男の感情が空気ににじませていたものだ。
彼はニッと白い歯を見せて、子供っぽく笑った。
私と同じ顔をして。
違うといえば肌の色と、髪の長さ。
だがこんなにも彼の表情は自分と違う。
本質は同じ筈なのに。
「歓迎するよ、兄弟」
それは彼の着く聖職になぞらえた冗談か
それとも言葉通りの意味か
それは数時間後には明らかになることだろう。
PR
この記事にコメントする
カテゴリー
最新記事
アクセス解析