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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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銀が躍る
見た目は自分と同じでありながら本質の違うその姿は
まるで鬼神

もはや断末魔の悲鳴を上げながら舞っている
身体を赤黒く染めて
髪を振り乱し、剣を振りかぶる度に、赤い飛沫が舞う

それは決して、敵のものばかりではない




やめてくれ…やめてくれ…

こんなに似てる俺達なのに、何故立場はこんなにも違うんだ。

何故俺は皆に守られて、姉さんに守られて、ここにいる。
何故姉さんは一人で皆の命を背負ってるんだ。

守りたいから、ここに来たのに。
ただ姉弟だからそばにいたいとかそんな思いじゃなかった。
そんなことだったら、あんなに憎んで恐れていた姉さんを追い掛けてきたりしなかった。

俺はただ、一人で苦しませたくなくて…
姉さんを理解して、助けになりたかったのに。





「泣くな、シェイディ。」
「泣いてない。」

本当はさっきまで泣いていた。

レイの背中に生々しく掘り込まれた傷を消毒しながらぶっきらぼうに答える。
傷は一つではない。
もう塞がってはいるが、いくつも所狭しと刻み込まれている。

これが彼女の選んだ道でも…。

「…姉さん」
「レイって、呼んでくれよ」

またか…。
そんなことどうでもいい。

「…この傷、動くのに支障あるかもしれない。」
「ああ、大丈夫。固まった肉は後で削ってもらう。」


生々しいことをさらりという。
今までも経験があることだから言えるのだろうが…
戦士だとしても、とても女性の言葉とは思えない。

「泣きそうな顔をするな。」
「……泣いてない。」
「泣きそうな、ということはこれから泣くかもしれないって可能性を指しているんだ。」

笑うレイの血の臭いが染み付いた指が頬を包み込んでくる。
こちらも女性のものとは思えない、石のように硬くなった指。
所々戦いで負傷し、変形した指。

「いくら傷つこうとこれが私の選んだ道だ。今はもう戦うしかない。シェイがそんな顔をすることはないだろう?」
「……何も出来ずに目の前で、あんたがボロボロになってて…何も思わずいられるか。」

そう、言葉にしてしまえば涙は堪えきれず、一筋頬を伝う。
泣きじゃくるのは、流石に堪えられたが。

「何もできないものか…お前はいずれ私達の参謀、いわば頭脳になるのだからな。」
「……。」
「それに私は剣だ、そう簡単に折れてはやらない。だから遠慮なくお前が私を振るえ。お前が私を手に取ってくれる限り、決して折れない。」

優しさからくる言葉ではなかった。
レイは自分で確信している、そう信じている目をしていた。

「だから私にひっついて小間使いのような真似をしなくていい。」
縫合したての背の傷を濡らした布で丁寧に洗う、シェイディのそんな行動ももう帰ってきてから何度めか分からない。
不安を紛らわすように、何度もレイの手当てをしに来る。

それでも彼は強いと思う。
いきなり日常から引きはがされ、こんな場所で参謀として勉強、実践を繰り返し、仲間が自分の立てた作戦下で血を流すのを見続けている。

シェイディは弱音を吐かずに気丈に振る舞っていた。
だがメンバーを駒として見れず、誰かを切り捨てる覚悟もないことは欠点だ。
本当に仲間を見殺したりしないにしても、覚悟がないことはマイナスなのだ。

「私を気遣うのなら、ここにいてくれるだけで十分なんだよ。」
造形の酷似した二人が重なりそうな程に近寄る。
唇はぎりぎり触れないが、吐息が唇をくすぐる距離。

レイが一方的に攻めているのだが、シェイディはそれを振り払わずにいる。
姉が背徳的な感情を持っていると分かっていても、囁く言葉は優しく、頬を包む掌は温かく、姉弟しかも双子という絆は断ち難いのだ。

「だからシェイ、どうか感情を殺してくれ。」
「……。」
「私達の上に厳かに構えるんだ。」

「そして皆を仕切る立場になって、皆に守られていろ、って言うのか。」


それこそ、レイの本当の狙い。
皆に守られる立場にのし上がり、安全な場所にいろと言う。
そうすれば、仲間は命を捨ててでもシェイディを守る。

彼自身、その立場に近付く程に姉の本当の思惑に感付き始めていた。

「そうだ、ゴーストのお前でいる間は誰も手の出せない場所にいろ。私でさえもな。」

感情を殺し、心を殺し、孤高のカリスマを演じろ。
ゴーストの内外ともに称賛し、ひざまづき近付けないように。

「……半分以上、あんたの我が儘だ。」
「ああ、お前には辛い役をさせる。だが確かに私達の為にはなっているだろう?何より…」




「……何より?」

その先の言葉は紡がれなかった。
レイは笑い、シェイディから離れた。


「私は、お前が大事なんだよ。罪もないのに此処まで着いて来てくれて、守れないなんてことになってたまるか。」
「……。」

何も、言い返せない。
危険だから来るな、と突き放さなかった点で、レイはシェイディを頼りにしていない訳ではないのだ。
最も信頼すると共に守りらなければと思っているからこその判断。
シェイディは閉口して、それを受け入れるしかない。
それが、皆にとっても、自分にとっても最善だと理解している。





「……そうだよ、シェイ。手の届かない所にいろ。」

誰も触れられない位置に。
皆の参謀であり、誰にも属さない。


「…何より、そうしなければ私がまたお前を独占したくなるのを我慢できない。」

私が縋り付いてしまわないようなところに。
私が求めてお前をまた壊してしまわないように。
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