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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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プロンテラの南大通りは冒険者が開く露店で大いに賑わっている。
騒がしいが煩くはない。少し脇の通りを行った市場とは違い、旅や戦闘の必需品は呼び込みしたからといって売れ行きが延びるものでもない。
声をかけずとも通り過ぎる冒険者は皆それなりに買う目的のものがあるのだから、来る客は来るし、来ない客は来ない。
売り手はただ品物を並べ看板を出して番する長期戦だ。

しかし中にはレアなものより日用品を並べ趣味のような露店をする者もいる。
品物の査定や買い取り、もしくは武器製造の依頼を目的としていることもあるが
「おはよう、今ミルクの気まぐれタイムセールやっているんだ。いくつかどうだい?
え、スピポがよかった?
おっけーおっけー、じゃあ今からハイスピのタイムセールにしてあげよう。」
露店の並びにシートを広げて商品を並べるそのブラックスミスは、露店そのものは遊びと思っているタイプのようだ。

続々とさばかれていく商品を一度綺麗に整理して、満足気に頷いた。
「んーで、いつまで辛気臭い顔して居座ってんだいチェリーボーイ。」
「誰がチェリーボーイだ殴るぞ。」
ため息尽きながら声をかけた商売人の隣でしゃがみ込んで邪魔しているくせに毒づくのは辛気臭いバードだ。
いかにも悩んでますといいたげに体育座りして顔を膝に埋めている。

バードとは時代や俗世を唄う職。
歌を歌うから声は大きく繊細で、言葉を紡ぐから饒舌で、世を知る為に愛想は良いもの。
少なくともブラックスミスはそう思っていたのだが、今隣にいる男はそれとは正反対だ。
無愛想で非社交的で横暴でおおざっぱ。
話すことや声に品はそうそう感じられない。

しかし不思議と彼は良い歌い手と思う。
「歌ってくんな。それがアンタの仕事だろ。アンタが好きで進んだ道だろ。好きなことやってりゃ悩みも吹き飛ぶ。客寄せにもなるし一石二鳥だ。」
「…んな気分じゃねー…。今歌ったら呪いの歌にでもなりそうだ。」
「じゃ、悩みの種んとこで呪いの歌披露してやんな。」

煙草代わりに棒付きの飴玉しゃぶりながら適当にそう言うと、バードは何故か鼻で笑った。
「そりゃあ、逆効果で奴も喜びそうだな。」
その発言から、彼の悩みの種の想像がつき、やっぱりと苦笑いした。

「もう観念して望み通りヤッてやれば?…あ、お嬢さん気にせんでな、そんな浮ついた話じゃないよん。」
客として居合わせた女性が熱の篭った好奇の眼差しで見るのを、笑顔であしらう。
「知り合いに殺人を進める気か。」
「ハイハイ、ジョーダンだよ。まあその男のタナトスには突っ込まないとしてだ、なんでお前さんなんだろな。」

「それは一目惚れってやつだ!」
突破トーンの外れた声がして、二人は飛び上がる。
声の方を見れば、いつの間にか商品を詰めたカート内に例のアサシンが体育座りしていた。

バードは三歩下がるが、ブラックスミスは近寄ってまじまじと彼を眺めた。
「彼が例のアサシン?」
「例のアサシンです。」
ブラックスミスの疑問に当の本人が答え、フレンドリーに握手なんかしている。

「なんだ、スッゲー変態って言うからキモい奴かと思ったら、ケッコーカワイイ奴じゃん。」
「変態でキモいですよ。自覚ありますよ。」

「仲良く話してんじゃねーよ!!!!」
少し離れて二人の様子を見ていたバードは友人が忌み嫌う男のそばに置き去りにできず、しかし近付くこともできずに離れて怒鳴りつけた。

「テメエ、何しに…いや聞くまでもねーな。さっさと消えろ!」
鬼のような形相で怒鳴りつけるバードに、ブラックスミスはまあまあと宥める声をかけた。
「んなカッカすんなよ。思ったより僕の好みだなアサシンさんよ。」
「ありがとう、ブラスミさんも綺麗な顔してるね。整形?」

サラリと人を馬鹿にしたようなことを言うアサシンは笑顔ながら相手を好いてないのかもしれない。
だが商売人の笑顔なのかそれとも彼を気に入ったのか、ブラックスミスは気にとめた様子もなく「自前だよ」と笑う。

心の広いその人間をまじまじ見ているのは興味が沸いたからだろう。
笑顔で皮肉を言うのはやめて、今度こそ互いに向き合ったように見えた。

「ブラスミさん、彼のことは好みじゃないのか?」
アサシンはバードを指差して聞く。
「あー…歌は好きだけど顔と性格が好みじゃねーな。愛だの恋には発展の見込みなしのフツーの友人だぜ?」
「よかった。」

アサシンはほほえましいほどに満面の笑みを浮かべた。
「じゃあアンタは殺さなくて済む。」
笑顔のまま口にした言葉に、今度こそブラックスミスは固まった。
バードに手を出す奴は殺すと、暗にそう言っている。
バードは口を閉ざし、吐き気を堪えるばかりだ。

「そんなにコイツがイーのかい。」
「うん。」
遊び相手を選ぶ子供のように軽い返答と無垢な笑顔だった。

「あ、そろそろ仕事の時間だ。」
「あっそ。バイバーイ、フラれたのは久々だなあ。殺しは無理だけどいじめて欲しいだけなら俺がヤッてやんのに。」
友人の言葉に、バードは再び驚いてその場の二人どちらにも近付きたくなくなった。

「ブラスミさん、俺の相手したかったら顔の整形はいらないから、胸と股間整形してきてね」
「……。」
そう言ってカートからはい出して二人に背を向けたアサシンを、ブラックスミスは無言で見送った。


「バレてたか。やるなあのにーちゃん。」
「おい。」
「ん?」
ブラックスミスが振り返ると、ずっと会話に入っていなかったバードが顔面蒼白にしていた。

「…さっきの言葉、冗談だろ?」
「ん?俺が代わりにやってやんのに、ってやつならマジだよ。」
「………。」
「知らなかった?俺ドSだよ?」

一歩後じさった純粋な青年を見て、悪びれた様子もなく笑う。
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