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*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
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被虐趣味という言葉を聞いたことがある。
恐らく虐められるのが好きということだろう。
ではそれ以上の趣向は、何趣味と言われるのだろう。

一人、いるのだ。
痛いのが好き、虐められるのが好き、罵られるのが好きという。
だがあれが本当に望むのはそれ以上。

死、いや殺。
もしくは虐殺。
そうしてくれと哀願してはこのバードを困らせるアサシン。

ボサボサの金髪で焦げ茶の瞳、アーモンド型の少し悪い目つきだがいつも笑みを浮かべて人懐こそうな人相。
可愛いというよりかっこいいが合うようないい歳した大の大人だが、どこか小動物を思わせる。
いや、人懐こい大型犬がしっくりくるだろうか。

「コロシテヨ」
そんな笑みを浮かべたまま、異質な言葉を呟く。
毎日、毎日。

「切リ裂イテ、ソノナイフデ」
跨がったバードの足の間で自ら服を脱いでいく男は、いつも以上に嬉しそうで異質。
バードがナイフを煌めかせると、身体をよじって恍惚に瞳を潤ませた。

「いい加減にしろよ、変態。」
何故か苦しくて、声が音になったかわからない。
ならなかった気がする。
でもアサシンは嬉しそうに手を延ばしてきた。

その両腕のどちらにも自傷の後はない。
あるのは胴体、胸と腹と背の上部に悍ましいほどに深く醜く刔られ切り裂かれ、縫合されたのかされなかったのか分からないような酷い傷痕。
胸と腹はともかく、背中に自分でつけられる筈がない。

「キザンデ…内臓マデ、突キ刺シテ…」
変態どころじゃない、狂ってる。
今さら再確認した、この男に自虐趣味はない。
殺されたがってる。

薄いところはピンク、深いところは茶色になった傷を、絵のように張り付けた白い肌が汗に光る。
隙間のあいたキャンバスを埋めるように、ナイフが白に引き付けられ…

いや違う。
こんなことしても意味がない、嬉しくも楽しくもない。
不快で不快で吐き気がする。
なのに掌にはナイフの柄が張り付いて離れない。

アサシンに向かって、錆びた刃先が近付いていく。
「…ッア」
傷の無い肩口に刃を充てて胸辺りまで滑らせる。

案外人間の身体は柔らかい。
簡単に肌が裂けて赤い雫が覗く。

「…ット、モット」
情婦のように赤子のように彼はバードに縋り付く。
錆びたナイフをフェラチオのように口に含み舐める。

バードの背筋に冷たいものが走ったのは、目の前の狂人に寒気がしたから。
欲情したからではない。

だが、いつも殺せと哀願してくるのを突っぱねていたから知らなかった。
こんな妖しく、淫らで、美しい顔をするのか。
口内か唇の端をナイフで切ったのか、唇の端から顎へ血が混じった唾液が顎へ流れ落ちる。

それを指先で拭って観察するように見つめた。

荒い息遣い。
熱い吐息。
「…この程度で勃ってんのかよ。」
「アア…最高ニ、幸セダヨ…」
好きな男に抱いて貰える女のように、嬉しそうに瞳を輝かせて…。
これで本当に殺したら、どんな淫らな顔をするんだろう。

さっきより深く、急所は避けて突き刺した。
想像より固い肉にめり込む刃先の感覚。
頭のどこかで止めろと自分は叫んだ。

狂ってる、アサシンも、このバードも。

バードは自分のことでありながら他人事のように二人を非難していた。

「ッア、アアアアッ!!」
身体を弓なりに張って、咽から漏れる甘い悲鳴。
バードは思わず耳を塞ぐ。
だがまだバードはナイフを握りアサシンを抑えつけて切り刻んでいる。

…ではあれは誰だ?
男を切り刻んでいる狂ったバードは。
傍らでうずくまって耳を塞いでいるバードは。
どちらが自分なのか。

「ハッ、アア!ハアッハアッ!!」
「啼けよ、盛りのついた雌猫みたいに。」
「止めろ、狂ってる…気持ち悪いんだよ!」

二人だった筈なのにいつのまにか暗闇には三人いた。
甘さを含む悲鳴、笑い罵る声、震え非難する声。
皮と肉が裂かれ血が流れ出、その上で絡みあうバードとアサシンの周りで血が跳ねてぴちゃぴちゃと響く。
それは凄惨ながら蠱惑めいていた。

「アッ…ン、ア!イクッ…ア、アア」
「望み通り、殺してやるよ!」
「嫌だ、止めろ!!」

自分から死にたがる変態だろうと、人を殺すのなんかごめんだ。
こんなことを望む筈がない。
耳を塞いでうずくまっているのが、自分―――



「……イ、シテ…ル…」
すぐ耳元で囁かれ、濡れた手で頬を撫でられる。
気が付けば、肌が細切れになり内臓まで覗かせたアサシンの死体は、自分の足の間に。

「…っう…っ」
吐き気に揺らいでナイフをとり落とす。
口元を押さえようとした手は真っ赤だった。



悪夢はそこで覚める。
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