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「マスター、ムナック帽が欲しいです。」

そんな一言から、また今日も慌ただしい日が始まる。


「………っ」
「マスター頑張ってー愛してるー」
「気の抜けた応援は止さぬか!!」

薄暗い洞窟を一人のウィザードが駆け抜ける。
その後ろを雪崩の如く大量の不死者達が追い掛けてくる。
その一匹一匹の姿は、ウィザードの隣に並んで走る者にそっくりだ。

同種なのだから当然だ。

「張るぞ、入りそびれるな」
「了解ッス」

互いに目配せした直後、ウィザードは足を止め振り返り、その背後にボンゴンが寄り添った。

「――セイフティウォール」
またその直後に二人の回りを鮮やかな防護壁が囲む。

「今日も素敵な高速詠唱ッスね」
そんなボンゴンの賛辞には耳も貸さず、ウィザードは次の呪文も紡いでいる。
その間に壁の周りを亡者が取り巻く。
中から見ると実に壮絶な光景である。

「――ロード・オブ・ヴァーミリオン!!!」
亡者を焼き尽くす天の炎が降り注いだのと、二人を守る壁が崩れたのは同時だった。



「本当に嫌ですね、ロボット化した冒険者って…馬鹿の一つ覚えのように一カ所に敵を集めて」
「馬鹿以前に中身がないからな」
ウィザードが身近にばらまかれた魔物達の落とし物を漁り、ボンゴンはそれを手伝い少し離れた場所の物を拾い集め、話していた。

「んー…ムナック帽ないッスね」
「そう簡単には出ぬか…」
荷物袋に収拾品を詰め込むボンゴンを見て、不意に罪悪感に襲われた。
思えば、彼もここにいた魔物なのだ。

「…お前、目の前で同類を焼かれて気分悪くならないのか。」

彼が立つその場所は、たった今焼けて地に還った仲間達がいたのに。

「いえ?むしろさっさとムナック帽だしやがれって感じッスけど。」
「………。」
この元不死者に繊細な心があると思った自分が間違いであった。

「マスター、俺達不死者は生来の怨念でこの世をさ迷うようになっただけッスから。何回も塵に返されるか退魔されてその力を失うまで、成仏出来ないもんデス。気にすることは何もないッスよ。」
「……怨念…」
「そ。俺も元は怨念の塊デスガ。」

まるで世間話のように淡々と話す様子に負の感情など見られない。
主人が不思議がる様子にボンゴンも気付き、少し笑ってみせた。

「俺はペットになる時に邪気を掃われたんで、危険は無いッスよ?」
「そんなことは分かっている。気になったのは…お前がどうして不死者となったかだ…。」

ただまるで“ボンゴン”という種族のように思えていた。
元は同じ人間で、生来の怨念から魔になってしまった存在。
分かっていたつもりだったが、実に悲しい者達だ。

付き合いの長いペットという肩書で傍に置いている彼も、その一人だということを忘れていた。


「…報われない恋で心中ってボンゴンムナックもいますがね、自分は殉死ッス。」
「…フェイヨンの、昔の風習か…」
「ええ、好きでもない王様と一緒に当たりくじに当たって、生き埋めッス。」



――― 何故だ

「マスター?」
「……っ」

目の前にいる者が死の間際に感じた恐怖のかけらも、自分は知らない。
だからこそ、想像すると恐ろしい。

「…マスター、泣いてくれるんスか。」

ウィザードは乱れかけた呼吸を一度止めて、吐き出した。
「殉死という風習が恐ろしかっただけだ!可哀相等と子供じみた理由ではない!それに涙ぐんだだけだ、まだ泣いていない!」
「その理由でも十分子供っぽいッスよ」

ボンゴンは笑い、遥か昔に体温も失ってしまった手で主人の頬に触れた。


「マスターの為なら、殉死出来たのに。」





「殉死など二度もするものではないだろう」
「そこにツッコミますか」
ウィザードは少しまだ気分が優れない様子だが、それでも歩き出した。
その後をボンゴンが追う。


「ところで、何故ムナック帽など欲しいのだ。」
「マスターに付けて、カップルということでマスターを頂こうかと。」
「帰るぞ」
「決断早っ」
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