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俺の恋人とその友人は、夕飯の片付けなんかしながら昔話に花を咲かせている。
団地妻かっつーの。

だが少し前までは、こんな風に大切な奴が一人いて、その仲間がいて仲良く飯食ったりするなんて思いもしなかった。
昔からしたら滑稽だが、体験してみるとなかなか悪くない。


「騎士さん騎士さん」
肌も髪もやたら白いウサミミプリーストが、俺の隣に腰掛けて売女みたいにこっちを向いていた。
初めは白子ってやつかと思ったがそれにしても白い。

その上極上の美人だ。男だが。
だがやはり俺は今の恋人の方がいい知れぬ魅力があると思う。

惚気だ。


「食後のテザートにこちらのクッキーと焼酎は如何ですか?」
やたら媚びを売るように言ってくるが、なんだその組み合わせは。
飲めないことはないが、元の文化が違う。

「こちらのクッキーなんか、貴方の愛しのアサさんのお手製ですよ?」
「嘘だな、アイツは基本小麦粉とか米のもんは食わねーし作らねー。」
図星を指されたようで、耳がピンと跳ねた。

このウサギプリが何を企んでいるかは知れないが、そのクッキーをあえて引っつかみ、口に放り込んだ。

咀嚼して、飲み下す。
「で、クッキーに何仕込んでやがったんだ?」
聞くと、プリーストは黒い笑みを浮かべて腹から笑いだした。

「引っ掛かりましたね!騎士さん!!」
「引っ掛かってやったんだよ。」
「実は先日、オリジナル勃起薬を開発する機会がありましてね。」
「何やってんだお前さんは。」
「その逆の開発をも成功したのですよ!!
今のクッキーに仕込んだのはその記念すべき第一作!!!!
食べればたちどころに性欲減退、ムスコさんは意気消沈!
これで日々貴方に無体されているアサさんをこの手で守っ」

俺はソファ脇にあったごみ箱にさっき食ったクッキーを吐き出した。

「Σな…、リバースですって!?」
「毒仕込まれた時の為にな、食った物吐き出すのは得意なんだよ。」
「何ですかその非生産的な特技は!!蛙かい!!!!」

「さて、性欲がどうなるって?
小生意気なボケプリースト見てたら気分も舞い上がってきたみたいだが。
さっきのクッキーのせいかな…?」
「Σヒイイイイッ」
「いやしけいを虐めるのもほどほどにしておけよ。」

チッ
つれない恋人は嫉妬も止めもしない。
したらしたでうざったいかもしれないが。




夜は特に何を話すでもない。
ただ並んで酒を飲む。
その合間に、ツマミを取り出して口に放り込んだ。

「…おい、そのクッキー。」
アサシンが指すクッキーはもう俺の口の中だ。

「さっき喰う時に一個くすねた。
ま、お前に無理させてんのも事実だからな、ちょうどいい。」
クッキーの味は、美味くはなかった。


「今度一ヶ月分くらいまとめて作ってもらうか。」
「勘弁してくれ。」

アサシンの目は本気だった。
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