忍者ブログ
*小説を携帯などからUPするスペースです。(かなり自分用です。)   *小話からプチ長編や、本編もちょくちょく更新すると思われます。   *かなりぶつ切りです。   *携帯からの更新故にあまり整理はできません(笑)   *携帯にも対応しています。   *コメントでの感想なども歓迎です。
[22]  [21]  [20]  [19]  [18]  [17]  [16]  [15]  [14]  [13]  [12
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

天気は曇り。
いつ雨が降るかもわからない空模様だった。

あのアサシンが道端にしゃがみ込んでいた。
隣にはアコライトの女の子。
異色な組み合わせだが、不思議と絵になるのは何故だろうか。

見つからない所で、様子を伺っていた。
でもすぐ女の子は立ち上がって、彼から離れた。
そしてこちらへ来る。
俺は咄嗟に何もない方を見て、考え事してる散歩人のふりをした。

だが彼女とすれ違う瞬間、思わず息を呑んで彼女を見つめてしまった。

ただの平凡な女の子だ。
それが顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
俯いて顔を隠していたが、見えてしまった。



「おい」
「やほ」
「やほじゃねえ」

膝を抱え込むようにしてしゃがんでいるアサシンと、それをにらみつけて見下ろすバードがいる。

「さっきの女の子、なんだ。」
「妬いてるの?」
「泣いてたぞ」
「女泣かせなイイ男?」
「ふざけてんなよ!お前が泣かせたんだろ!」

怒鳴り、掴み掛かってもアサシンはにこにこ笑っている。
だがそれで身体を引かれ、曲げた膝の奥、腹の上にあるものがバードの目に入った。
一瞬、ただ驚き固まった。
そこにいるのは半目を開けてぐったりとした猫らしき物体。
ぱっと見はぼろ雑巾に見えてしまった。

「なんだ、それ」
「猫。さっき死んだ。」

猫は体の下にアサシン用マフラーを敷かれてベッドに寝ているようだ。

「もう助からないからヒールいらないって言ったのにね。さっきの子がヒールしちゃって苦しいの長引かせちゃった。」

その声には女の子を責める感情も、猫を労る感情もない。
まるでただの世間話。

「……。」

なんと言っていいか分からず、バードは立ちすくんでいた。
いつもただ気持ち悪いだけのアサシンなのに、その時は少し違って見えた。

やはりまともには見えないが、まるで小動物の死を悲しむ子供。
だが泣かない、悲しんですらいない。

笑っている、いつも通りに。
つまり何も感じていないのだ。

「なんで、そうやってるんだ?」

マフラーを汚して、肌寒い道端に座って、猫の死を看取って。

「コイツ、飼い猫だから。」
「野良猫ならしないのか」
「野良は人間に興味ないだろ。一人で死ぬのは覚悟してる。」

だが今そこで息絶えた猫は違う。

「最後に飼い主を恋しがったか怨んだかは分からないけど、人の体温は欲しかっただろーし。」

そう言いながら、彼は猫の胸や喉を指先で探り、死んだことを再確認する。

「………案外……優しいんだな。」

そう呟くのにもかなり抵抗があった。
大嫌いな相手だ、本当なら口をききたくもなかった。
でもそう思ったのだから仕方ない。

しかし彼は首を横に振った。

「あんたは、歌うことは好き?」
「?」

突然振られてすぐに認識できなかったが、遅れて頷いた。

「でも毎日毎日、歌い続けさせられて、歌は積もりに積もって後も先も見えなくなったら、歌うのも嫌にもなってくるだろ。」

頷いた。
歌い人の魅力は自由なところだろう。
まだ無限にあるであろうものの美しさを探し、歌うのがいい。

「それと同じ。俺はそうやって殺すことが嫌いになった。」


それはつまり

飽きる程に、彼が人を殺したという事実。
だが何となく想像もできて驚かなかった。
こんな変態がまともな人間なはずもない。

「なら俺に殺してくれというのも嫌になれ。」
「それは別物。」
「殺すことが嫌になったんだろ。ならまともになれよ。殺されたいなんてもっと馬鹿らしい。」



アサシンが笑う。
さっきまでの無感情とは違う。
いつも殺してと懇願するときにしている、底の知れない不気味な目だった。

彼はマフラーで猫を包み、抱え上げた。

「じゃあ、あんたに質問。」



―あんたが歌うことに飽きた時、願うことは何だと思う?




音をたてて空から雫が落ちてくる。
その音、雫の描く波紋
それだけで美しい歌の一つになるだろう。
慈しむべきそれは、自分をいずれ変える。



自身が歌になりたい。
それが答え。
伝わる歌にも新しい歌にも、夢物語のような自伝の歌がいくつもある。
皆、同じことを考えたのだ。

あの男も既に変わった。
そして自伝をのこした詩人達のように、願いを果たそうとしている。
それだけのことなのか。



―歌うことに飽きれば、歌われることを願う

―殺すことに飽きれば、殺されることを願う


最上の形で
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
アクセス解析
忍者ブログ [PR]